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海里が抱えてきた罪の意識

『あのクズを殴ってやりたいんだ』第9話 ©TBS
『あのクズを殴ってやりたいんだ』第9話 ©TBS

 人間は、明るさを取り戻すまでには時間がかかる。でも、闇落ちするのは簡単だ。やっと立ち直ってきた海里にとって、ずっと可愛がってきた弟分・悟にかけられた「あんたが死ねばよかったんだ」という言葉は、ふたたび闇の世界に戻っていく十分な理由になる。

「なんの感情もないクズだったあんたは、変わった。前を向いた。勝手に許されたような気になって、夢を語って。あんただけ、人生を楽しくやり直すなんて、そんなのおかしいだろ」

 悟の言葉を聞いたとき、「なんでそんなことを言うんだろう?」と思った。だって、悟は海里がどれだけ苦しんできたかを、間近で見てきたはずなのに。海里はただのうのうと生きてきたわけじゃない。

 ちゃんと罪の意識を持ちながら、それでも必死に自分の人生を諦めないように頑張っていた。それなのに、なぜこんな言葉をかけられるのか? と。

 しかし、悟の視点から物語を捉えてみると、彼の気持ちも分からなくはないなと思えてくる。たとえば、もしも大事な家族を殺されてしまったら。海里の場合のように、故意ではないとしても、殺した張本人が幸せそうに生きていたら、「うちの家族を殺しておいて、なんで幸せになってんの?」と思ってしまうかもしれない。

 でも、復讐からはなにも生まれないことも分かっている。悟は、どれだけの時間を、この世でいちばん憎んでいる人物(=海里)に費やしてきたのだろう。その時間を、もっと有意義なことに使っていれば、海里のように前を向くことができたかもしれない。

 それに、ほこ美に致命傷を負わせるために不正を働かせるのは、悟のなかの正義に反することではないのだろうか。いちばん憎んでいる人物と同じ行動を起こすことで、彼の心は満たされるのだろうか。大地だって、悟が復讐に人生を捧げることを望んではいないはずだ。

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