鹿乃子(松本穂香)の晴れやかな笑顔
もちろん、いちばん辛い思いをしてきたのは、嘘を聞き分けるという奇妙な能力を持って生まれた鹿乃子だ。しかし、母親のフミも、彼女と同じように、たくさん悩んできたのだと思う。
大切だからこそ、自分の言葉で娘を傷つけてしまったら…と考えると、怖くなる。嘘をつかないように、嘘をつかないように、と自分に言い聞かせているうちに、何が嘘で、何が真実なのか分からなくなってしまった瞬間もあったのではないだろうか。
「少しの嘘を恐れて、たくさんの本当を伝えていなかった。大好きよ、鹿乃子」
左右馬と一緒にいても、どこか寂しそうな表情を見せることが多かった鹿乃子が、フミにこの言葉をかけられたとき、つきものが取れたように晴れやかな笑顔を見せていた。きっと、母親から拒絶されたかもしれない…というトラウマが、彼女の心のなかに大きな影を落としていたのだろう。