気が狂いそうな”復讐劇”の行方は?
2つ目は恒川の気が狂いそうな”復讐”である。
事件は押見を彼氏だと勘違いした友繁沙也加の元夫が起こしたという事で解決する。では押見は直近10年間どこへ潜伏していたのか?
真実は恒川が押見を10年間監禁し続けていたというおぞましいものであった。
恒川は正継と協力して押見がサポーターをしているサッカーチームが試合をする度に現場へ足を運ぶなど執拗に探し続け、その甲斐があり10年前発見に至っていた。
しかし事件は既に時効を迎えており警察に突き出しても無意味だし、何より押見を殺す程の覚悟を恒川は持っていなかった。
そこで恒川は押見を自宅へ監禁し顔も見せず言葉も交わさず食事だけを与え続ける飼い殺しを実行したのである。
司法による懲役も刑罰ではあるものの監禁の側面がある。それを恒川は個人で10年間もやり切ってしまった。
しかし沙也加と出逢い彼女が元夫のストーキングに怯えていると知ると、亡くなった里穂と彼女が重なり恒川を解放して沙也加を守ろうと決意する。
しかし10年間監禁されていた押見は解放されても正体不明の監禁者を許さず、僅かな手掛かりから恒川家を訪ねていた沙也加に辿り着き、彼女の動向から犯人を割り出し、復讐しようと画策していたのである。
29年前の事件を悔いず10年監禁されても正気を保ち恒川への復讐心を失わない押見。29年前の事件に囚われて10年間押見を監禁し続けた恒川…どちらも間違いなく狂人である。
サブタイトルの通り、作中で復讐者である間は恒川も押見も正継も誰も笑わなかった。14年前の恒川の笑顔は後に自戒となり、最後に恒川が三浦へ見せた笑顔は復讐が終わった安堵か彼への感謝なのか分からないが14年前と比べると不細工で無理矢理なものであった。
しかし恒川が自分は笑っても赦される存在とようやく前に進めたという解釈もできる。
余談だがラストに三浦が特命係に礼として飛騨牛を贈ったが、S5「せんみつ」で三浦の故郷が岐阜であることが明かされていたのだった。
過去作の設定を小ネタとして使ってくるのも『相棒』の面白さの1つ。良い意味で小憎たらしい一幕であった。
(文・Naoki)
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