災害、貧富の差に政治の腐敗
初回の冒頭で1772年に江戸の町を襲い、1万4700人もの死者を出した「明和の大火」が描かれていたが、当時はこうした災害や飢饉など、未曾有の事態が頻発。
田沼意次が幕府を立て直すために重商主義政策を推進した結果、経済は活性化するも、貧富の差が広がっていたところに追い討ちをかけた。他にも賄賂が横行し、政治が腐敗するなど、調べれば調べるほど、この時代は現代とよく似ているのだ。
身分(生まれ)でほぼ人生が決まり、成り上がることが限りなく難しい時代において、どう生きていくか。そのヒントを、吉原の貧しい庶民の子に生まれるも、のちに時代の寵児となる蔦重の生き方を通して本作は示そうとしているのではないか…と思わせる初回の放送だった。
蔦重が生まれた吉原の遊郭は、女が春を売る場所…というと聞こえがいいけれど、早い話が風俗街である。「好きで吉原に来る女はいない」という蔦重の台詞が印象的だったが、多くの女性は幼くして親に売られ、前借金をし、それを働いて返し終えるまでは外に出られなかった。
そんな吉原は江戸で唯一、幕府が公認していた遊郭。つまり政府が売春を認めていたということであり、現代の価値観からすると驚きを禁じ得ない。
しかも、遊郭は売り上げから幕府に上納金(税のようなもの)を収めなければならなかった。でもその分、遊郭側も市場を独占できるため、Win-Win。…だったはずが、この頃、幕府非公認の遊郭である岡場所ができ、庶民的な商いを始めたものだから、吉原はすっかり客を取られてしまう。
そんな時代を背景に始まった本作。幼くして両親と生き別れ、客を遊女屋へ案内する引手茶屋「駿河屋」の主(高橋克実)の養子に。子役パートは今回もなく、22〜23歳となった蔦重は義理の兄・次郎兵衛(中村蒼)が任された茶屋を切り盛りしながら、貸本屋を営んでいた。