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女郎の間でも格差があった

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第1話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第1話 ©NHK

 蔦重は仕事柄、遊女たちとも関わりがあり、特に親しい間柄なのが、吉原でともに育った幼なじみの花の井(小芝風花)と、子供の頃から優しくしてくれた恩人の朝顔(愛希れいか)。第1話は女郎の中にも格差があったことを、この2人が示していた。

 当時は吉原から客足が遠のいていたとはいえ、花の井は老舗女郎屋「松葉屋」を代表する売れっ子で客がつかない日はない。引手茶屋に客を迎えに行くため、大人数を引き連れて遊郭を闊歩する花魁道中も華やか。

 そこで池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」の主人公・鬼平のモデルである、火付盗賊改方・長谷川平蔵(中村隼人)に一目惚れされる。格子の内側に並んで客を待つ“張見世”にも出なくていいし、かなりの特別待遇だ。

 一方、朝顔は元々「松葉屋」の花魁だったが、体を壊してからは最下層の女郎屋「河岸見世」で客を取っている。しかし、客足はすっかり遠のき、食べるものにも困っている状態。花の井から蔦重を通じて差し入れが届けられるも、優しい朝顔はお腹を空かせた年下の女郎に譲ってあげ、結果、亡くなってしまうのだ。

 朝顔が身ぐるみを剥がされ、全裸の状態で同じく亡くなった女郎たちと捨てられているシーンは衝撃的だった。

「ここまでの描写は必要なかったんじゃないか」という声もある。だが、実際にそういうことがあったのだ。二度と繰り返してはいけない歴史だからこそ、目を逸らさず、影の部分もありのまま描く、そういう覚悟を感じるシーンだったと思う。

 なお、本作には、ヌードや性的なシーンにおいて俳優側と制作側の間に立ち、撮影をサポートするインティマシー・コーディネーター(IC)の浅田智穂氏が参加している。

 勘違いされやすいが、ICは俳優の尊厳と心身を守りながら、監督の演出意図を最大限に実現できるようにサポートする仕事であり、IC自身が「これはダメ」「あれはダメ」と判断するわけではないことは強調しておきたい。

 NOが言える環境で俳優の安心と安全が確保された上で、俳優もスタッフも覚悟を持って作品づくりに向き合っているのだ。

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