渡辺謙と横浜流星の演技のぶつかり合い
朝顔の死をきっかけに、女郎を守ろうとする蔦重。そんな彼の前に立ちはだかるのが、女郎屋や引手茶屋の主人たちだ。高橋克実、安達祐実、伊藤淳史、正名僕蔵、山路和弘、水野美紀…となかなか濃い顔ぶれ。
蔦重は彼らに女郎の待遇改善を求めるが、突っぱねられる。思いやりや正義感などの徳を忘れ、女郎をこき使って私腹を肥やす彼らの悪人っぷりは迫力がありながらも、どことなくコミカル。
ただ、蔦重に感化され、ここから変わっていくのではないかーそんな余地も個々に残されていて、最終的には視聴者から愛されている未来が見えた。
さて、そこから蔦重がどうしたかというと…偶然出会った謎の男(安田顕)に「田沼意次に話してみては」と言われ、田沼屋敷へ。どうにか屋敷に忍び込み、田沼意次(渡辺謙)に吉原の窮状を訴える。
世界のケン・ワタナベと横浜の演技のぶつかり合いは、この回における最大の見どころだろう。蔦重は岡場所や宿場の飯盛女(女郎)を取り締まってほしいと頼むが、それらは国益になっている部分もあり、要求を一蹴する意次。しかし、悪代官のような雰囲気はない。上辺だけを取り繕わない清濁併せ吞むキャラクターを渡辺が体現しており、不思議と魅力がある。
そして驚くべきは、横浜が放つ渡辺に引けを取らない存在感。「お前は何かしているのか、客を呼ぶ工夫を」と意次に言われた途端、蔦重が見せる雷に打たれたかのような表情に目を奪われた。
「お言葉、目が覚めるような思いがいたしやした!まこと、ありがた山の寒がらすにございます!」
この圧倒的な“陽”の雰囲気。声も表情も溌剌としていて、「彼はここから成り上がっていくのだろう」という説得力がある。一方で悲惨な状況に置かれている者にも心を配る人情も持ち合わせており、1話からすっかり虜になってしまった。
現代社会を漂う閉塞感を打破してくれそうな予感がする。
(文・苫とり子)
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