キーマン・鳥山検校を演じる市原隼人の色気

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第9話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第9話 ©NHK

 
 さて、第8話から登場のキーマンが、瀬川を身請けする鳥山検校。盲人の職能団体「当道座」の最高位に就く彼は、大金持ち。しかも盲目だが、心の目は鋭い――。

 そんな一癖も二癖もあるこの役を演じているのが、待ってましたの市原隼人! 彼の声は本当に不思議。

 どちらかというと喉の奥で情熱を押し殺しているようなこもった声なのに、はっきりと響くのだ。芸能界でも唯一無二のマジカルボイスといっていいだろう。とにかく間の入れ方がいい。少し焦らしてセリフを言う、「溜め方」が天才的に色っぽいのだ。

 加えて、物語のスケールを100倍にする演技の風格。給食だろうが(『おいしい給食』)、野球だろうが(『ROOKIES』)、彼がいるだけで、それは「命を掛けた一大イベント」と化すのである。

 10代の頃の彼は「やんちゃな硝子の少年」のイメージだった。触れると壊れそうな透明感と繊細さ、青春の瑞々しさ、あやうさをギュッと集めたような佇まい。

『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(2008)と『WATER BOYS』(2004、フジテレビ系)で見せたそのあどけない笑顔は今でも鮮やかに思い出せる。そんな彼ももう38歳。カリスマオーラすら感じる俳優となった。

 史実では、なんと瀬川の身請けに1,400両(約1億4,000万円相当)払ったとされる鳥山検校。今のところ彼は瀬川にやさしいものの、正体は強引な取り立てをする高利貸し。

 その後の生活はどうなるのか。さらに、第9話の最後ギリギリで登場した、田安賢丸(寺田心)のギロリ上目遣いにもゾッ。

 不穏の種があちこちに巻かれたまま、来週へ持ち越しとはべらぼうめ! 第10話が楽しみだが怖い、怖いが楽しみ、である。

(文・田中稲)

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