大河ドラマ『べらぼう』第14話考察。小芝風花が見せてくれた”夢”が終わった…2回目の「おさらばえ」に込められた想いとは?【ネタバレ】

text by 苫とり子

横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)が現在放送中。貸本屋からはじまり「江戸のメディア王」にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く。今回は、第14話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

蔦重(横浜流星)と瀬川(小芝風花)の切ない別れが描かれた
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14話

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第14話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第14話 ©NHK

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14話のタイトルは「蔦重瀬川夫婦道中」。その甘い響きとは裏腹に、蔦重(横浜流星)と瀬川(小芝風花)の身を引き裂かれるような切ない別れが描かれた。

 幕府による当道座の取り締まりで鳥山検校(市原隼人)と瀬以(小芝)が捕らえられてしまい、心配する蔦重。その後、裁きが下るまで鳥山は入牢、瀬以は松葉屋の預かりとなった。

 そんな中、大文字屋(伊藤淳史)から五十間道に空き店舗が出ると聞き、自分の店を持ちたいと考えた蔦重はさっそく忘八たちから独立の許しを得る。その頭にあったのは瀬以のこと。吉原で瀬以と再会を果たした蔦重は「できれば店、一緒にやらねえか」と誘う。それは実質的なプロポーズだった。

 瀬以の表情には一瞬喜びの色が浮かぶが、すぐに憂いを帯びる。あくまでも瀬以は鳥山の妻。1400両もの大金で手に入れた瀬以を鳥山が手放すなど考えられない。それにもし鳥山が財産を没収されるようなことがあれば、どこかに売り飛ばされる可能性だってある。

 そうやって人間は気づくと最悪のシナリオばかり考えがちだ。起きてもいないことに不安や恐れを抱く。未来はどうなるかなど、誰にも分からないというのに。「だったら、とびきり楽しい想像を」と2人に教えてくれたのが、朝顔(愛希れいか)だ。

 これまで2人はその教えに支えられ、時には理想の未来を自分の手で作り出そうとしてきた。

「今はいいように考えねぇ?」という蔦重の言葉で、瀬以の暗く沈んだ表情がパッと明るくなる。そこから2人は、人に鼻で笑われるような、幸せしかない夢を描いた。

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