瀬川の決断

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第9話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第9話 ©NHK

 こうして正式に瀬以は瀬川に戻る。蔦重が当初は瀬川が吉原に残り、本を売ることに反対していた駿河屋(高橋克実)も説得し、2人の夢はもう実現間近だった。

 ところが、瀬川は蔦重に別れも告げず、吉原を出ていく。幸せな夢から強制的に起こされたかのような衝撃。少なくとも2つの出来事が、瀬川の決断を後押しした。

 1つは吉原が公に「四民の外」とされたこと。きっかけは大文字屋が神田に屋敷を購入しようとしたことだった。すでに手付金も払い終えていたが、町名主の反対で契約が破棄に。

 怒った大文字屋が奉行所に訴え出たところ、逆に「そもそも吉原者は“四民の外”。市中に家屋敷を得るなど甚だ不届至極」と叱責され、今後吉原の人間が見附内(江戸城外堀の内側)に土地を買うことを禁じられてしまったのだ。

 そして瀬川が吉原を出ると決めたもう1つの理由は、自分に対する世間の厳しい風当たりを実感したことだ。吉原に帰ってきてから、松葉屋の寮で療養している女郎たちの看病を手伝っていた瀬川。

 そこで、堕胎後の経過が悪く寝込んでいた松崎(新井美羽)という女郎から瀬川は刃物で傷つけられる。松崎は前話にも一瞬登場しており、元は旗本の娘だった。しかし、両親が座頭金の返済に苦しみ自ら命を絶った挙句、吉原に売られてしまった松崎。

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