悪い人じゃなかった白まゆ毛
悪い人じゃなかった、むしろいい人だったといえばこの人も。石坂浩二演じる白まゆ毛こと松平武元である。第15回「死を呼ぶ手袋」では、徳川家基が18歳で急死。暗殺疑惑が浮上する。
武元は暗殺の道具と思われる手袋を手に入れ、暗殺犯と疑われている田沼意次(渡辺謙)を呼び出すのだ。てっきり手袋をちらつかせながら「お前が暗殺計画を立てたんじゃろう!」とネチネチネチネチ言うと思いきや、彼の忠義を認めていることを伝え、金銭を優先するやり方についてやさしく説教するのである。
これまでの嫌味爺ぶりはどこへやら…! きっと彼は「死」が近いことを感じていたに違いない。
しかし、石坂浩二の演技は、重さアリ、品格アリ、まさに名演。さすが白黒テレビの時代から大河ドラマに出ていただけある。あの白まゆ毛も、自ら演出の方と相談し、試行錯誤しながらあのインパクト大の長さ&大きさに決めたというから素晴らしい。
田沼意次役の渡辺謙も世界に名だたる大俳優である。石坂と渡辺の空き時間はさぞかし演技論に花咲いたことだろうと思いきや、2人の共通の推し、阪神タイガースの話をずっとしていたというから、なんだかかわいいぞ!
石坂浩二は今回見事なお爺さんぶりを演じてらっしゃったが、昨年11月公開の映画『海の沈黙』(2024)の公開記念舞台挨拶でのお姿は背筋も滑舌もシャンとしていた。83歳とは思えない。若すぎる。いったい何食べてるの?