安田顕、怪演! 平賀源内の最期

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第16話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第16話 ©NHK

 いい人に変わっていった鳥山検校や松平武元とは逆、ずっと面白くていい人だったのに、闇落ちしたのが平賀源内(安田顕)である。

 第13話「お江戸揺るがす座頭金(がね)」では「エレキテール! 売れてール!」と大はしゃぎだったが、14話からジワジワと疑心暗鬼になり、異常行動が顕著になっていく。演じる安田顕が本当に怖い!

 2024年、小芝風花主演で好評を博したフジテレビの「大奥」では田沼意次役を演じておられていたが、こちらもやはり狂気の中死んでいく様を見事演じていた。彼の場合、「常軌を逸する」段階が見えてくる。まさに天才である。

 突然おかしくなるという単純なものではなく、心の中を不安や疑いが巣食っていくのが伝わる。だから観ているこちらまで、怖くてつらくて泣きたくなるのだ。

 第16話「さらば源内、見立は蓬莱 (ほうらい)」での、牢屋で、田沼意次が源内の頬を撫でながら体を引き寄せる場面は、神シーンという声多し。大好きな田沼意次にやっと会えて、正気に、いや、もはや幼子に戻ったような源内がたまらない。

 台本のト書きには「手に触れる」だけ書かれていたそう。あれがあんなに苦しいほど愛情を感じるシーンになるとは…! 渡辺謙も安田顕も本当にすごい。

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