謎が謎を呼ぶ展開
主人公・乃木憂助の真意はどこにある?
第5話にして、漸く本性を現しつつある主人公の乃木憂助。“別班”の所属であることや、過酷な生い立ちが判明していくものの、彼の真意は未だ不明瞭だ。
特に、筆者が引っ掛かりを覚えたのは、ジャミーンのためのクラウドファンディングに1,470万円もの大金を振り込んだ件である。
ここで2つの疑問が沸く。乃木はなぜ、実父が仕切るテロ組織と敵対し、「この美しき我が国を汚すものは許さない」という信念を持つに至ったのか。さらに、「別班」という別の顔を持つとはいえ、単なる出世レースから外れた商社マンである乃木が1,470万円もの大金をポンと用意できたのかという点に不自然さが残る。
ここで思い出されるのが、この物語の端緒となる誤送金事件だ。ここからは筆者の考察だが、「GFL社」に渡った約140億円の一部が乃木の元に渡ったという仮説、さらに乃木は、自分を受け入れてくれた「別班」と、血縁のある「テント」の二重スパイであるという仮説も想像できる。
しかし、様々な考察を裏切り、想像のはるか上を行く予測不能のストーリーを提示し続けている本作。第6話以降も、視聴者を驚かせ続けることだろう。
注目度も上がってきており、第5話の平均世帯視聴率は14・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、上昇を続けている。さらに、本作のノベライズ本の発売も決定したことで、“結論は劇場版で”という消化不良の結末を迎えることもなさそうだ。
本作は『半沢直樹』などを担当した福澤克雄が原作を手掛けるオリジナル脚本で、堺雅人の他に、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司、総勢42人にも上る超豪華キャストを発表したのみで、舞台設定やストーリーを初回の放送まで一切明かさないという異例の手法が取られた。この手法は、上映中の宮崎駿監督の大ヒット長編アニメ映画『君たちはどう生きるか』に似ており、謎が謎を呼ぶ展開とともに、一応の成功を収めているといえよう。
第1話のラストシーンにて嵐の二宮和也がサプライズで登場。公式人物相関図の役所の右隣枠は初回放送までシークレットとなっていたため、二宮の登場は視聴者を大いに驚かせた。また事前に公表されていた松坂桃李が4話まで登場しなかったことにより、未登場でありながら松坂の名前がSNSで話題になるなど、事前のキャスト発表にも施された仕掛けが上手くハマった形となった。
(文・寺島武志)
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