ドラマを彩る個性豊かなキャスト陣
お金持ちの家に生まれ、親からは過剰に持て囃され、SNSでは辛らつな言葉を投げかけられる岩倉を演じるのは、技巧派俳優の橋本淳。岩倉は、いろいろ抱えこんだ面倒なものを消化できずこじらせてしまっている。そのことが、2話の小津の家で開催された寄り合いに1人だけリモートで参加する感じなどから察せられる。ドラマ『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日)でもかなり癖のある立てこもり青年を演じていたが、こういうちょっと面倒な人物の役を橋本がやると、どうしても目がいってしまうから不思議だ。
そのほか、真飛聖や竹原ピストル、1話以降は声のみの出演になってしまうが、関智一や須藤理彩といった面々が脇を固める。シュールなコミカルとリアルの絶妙な狭間を縦横無尽に漂う感じが、観ていてとても楽しい。
もちろん、主演の2人が醸し出す空気も面白い。
本郷奏多のリアリスティックなTHE都会の青年という感じはさすがの一言。メイを引き取った当初、どこか気だるそうにしている小津がなんともぴったりとハマっていた。しかし、小津は徐々に福島という土地、そこに生きる人々、そしてメイとの関わりを通じて変化していく。変化、というか、元来持っていた根っこの優しさがどんどん表出していく、といったほうが正しいかもしれない。
両親の葬式で、誰がメイを引き取るか?と話す大人たちの中で最初こそ引き取ることを拒んでいたものの、「都合じゃなくて愛情で決めましょう」と誰よりもメイのことを思った発言をしていたし、4話でメイがいなくなったときに見せたメイの写真を見返す眼差しは、単なる“一時預かり大人”のものではなかった。これらは、一朝一夕に醸し出されるものではないはずだ。
そんな都会の青年が、人との関わりを通して優しさを滲ませていくグラデーションを、本郷は丁寧に表現している。