作品全体に蔓延る”暗さ”
まず第一に、暗い。このドラマ、暗いのだ……!それは遥斗を苦しめる高次脳機能障害を真摯に描いているからなのかもしれないが、「切ない」や「テーマが重い」「ストーリーが深刻」というよりも、全体的に“どよ〜ん”とした空気を感じてしまう。
高校時代と現代のシーンが交互に展開され、忘れられない初恋の思い出を美しく想起させるのは『First Love 初恋』と同じフォーマットである。しかし『366日』の高校生パートは、どこかパワーが感じられず、10代特有の溌剌さもない。忙しない社会人と比べて、高校時代はもっと楽しくて、もっとキラキラしていたはずなのに……!
時代を代表するラブソングがテーマなのに、高校生パートのほとんどが「学校」と遥斗の実家である「お好み焼き屋」との往復で、ポップな平成カルチャーを感じられないのももったいない。
そしてなんといっても“どよ~ん”の最たる原因は、物語を引っ張る明日香と遙斗の後ろ向きすぎるキャラクター設定にあると思う。いや、記憶を失った遥斗がなかなか前を向けなかったのは当然だ。
昔話で盛り上がる同級生たちと一緒に過ごすのが辛くなり、記憶障害になってから出会った看護師のほうが楽に感じるのも致しかたない。