「多様性を楽しむ方がいい」 ドラマ『時をかけるな、恋人たち』脚本家・上田誠インタビュー。吉岡里帆&永山瑛太の話題作
カンテレ・フジテレビ系で放送中のドラマ『時をかけるな、恋人たち』。主演の吉岡里帆が永山瑛太との”恋の逃避行”を描くタイムパトロール・ラブコメディー。今回は、本作で脚本を務めるヨーロッパ企画・上田誠さんのインタビューをお届け。ドラマ制作のエピソードや、細部の演出までたっぷりとお話を伺った。(取材・文:あさかしき)
「ローファンタジーは、映像の本質に近い」
“演劇”と“映像”の創作の違いについて
―――上田さんご本人が手掛ける作品としてSFが得意ジャンルだと思います。SFを好きになったきっかけの作品はありますか?
「『ドラえもん』で、ドラえもんがのび太に頼まれて宿題をやってたら、未来のドラえもんがタイムマシンで助けに来て、やっと終わったら今度は自分も過去に助けに行かなきゃいけない話があって。そういう話って、パズルみたいで面白いと思ったことがきっかけの一つです。
あとは、SF小説でタイムマシンものを読んで好きになりました。元々理系でプログラミングとかをやっていて、エラーを出さずにプログラミングする作業と近かったので、性に合ってるという感じですね」
―――近年のハリウッド作品でSFとなると、世界が崩壊するような、スケールが壮大になっていく一方で、上田さんの作品は、個人の恋愛や、狭い空間での細やかな日常を重要視する作品が多い印象を持ちます。日常に関わる話を作るきっかけになったのは、やはり『ドラえもん』が関係してくるのでしょうか?
「そうかもしれない。ハイファンタジーとローファンタジーって言い方をしますが、例えば『指輪物語』のように、世界観全部がファンタジーのものがハイファンタジー。『ドラえもん』のように、日常の中に1個ファンタジーが入ってるのがローファンタジー。
演劇って全キャンバスが真っ白なので、そこに全てを作らないといけない時に、ハイファンタジーを作る方がお得感があると思っていて。だから演劇ではハイファンタジーを作ることもあります。
映像の場合は、基本的に現実の空間を撮影するものなので、その中にフィクションをちょっと入れるローファンタジーの方が理にかなっている気がしています。ローファンタジーは、映像の本質に近いんじゃないかと。
でも社会派のように本当にリアルなものを作りたいわけではなくて、リアルの中にフィクションが入ってる、それでリアルな感情が際立つっていうのが好きなので、映像では割とそういうものを作っています」