田中圭が”モラハラ夫”を熱演
一方、夫の宏樹は外面がよく、“理想の夫”を演じるのがうまい。だから傍からみれば宏樹は“いい夫”だし、夫婦仲もよくみえる。でも、美羽に対してはすこぶる酷くて。
「もうちょっとマシな格好できないの?」「封筒ひとつまともに持って来られないなら、家のことくらいちゃんとやって」「暇だから子ども欲しいんだろ」など、 酷烈な発言を集めたらキリがない。
そんなどこを切り取っても理不尽極まりないモラハラ夫を、にじみ出る人の良さを完璧に封じた田中圭が熱演。説得力のある演技で、宏樹という一人の人間を解像度高く表現する。
だからなのか、宏樹を完全に悪者にするにはまだ早い気もしているのだ。宏樹の言葉はどこか自身をさげすむ表現が含まれているし、外に出て生き生きした美羽をみたときは自分のもとに繋ぎ止めようと必死だった。ところどころ“弱さ”が垣間見えるのが、どうしても気になってしまうのだ。
とはいえ、宏樹と暮らす美羽は、まさにかごの中の鳥。ときにはそのかごから抜け出して、空いっぱいに羽ばたいてみたい気持ちもわからなくはない。そんな抑圧された生活が続いたある日、美羽は2歳年下の幼なじみ・冬月稜(深澤辰哉)と再会してしまう。