『アンナチュラル』との符合
特定の仕事に就いているだけで差別に遭ったり、命を軽んじられたりすることは何も過去の遺物ではない。現代だってそう。脚本家の野木亜紀子は常に便利な社会を支えているにもかかわらず、透明化されている人々に目を向けてきた。
印象的だったのは、「父ちゃんも兄ちゃんも毎日真っ黒になって炭を掘ってる。海の、海の底より下の、地底の底の底で。だけど、それは誰かに踏みつけられるためじゃない」という鉄平の台詞。
それを聞いて思い出さずにいられなかったのは、「誰がために働く」というサブタイトルがつけられた『アンナチュラル』第4話だ。同回では我が家・坪倉由幸が演じる製菓工場の従業員が上の人間に不当な扱いを受け、過労の末にバイク事故で命を落とす。その坪倉が本作で、「たかが端島」と見下す鷹羽鉱業の取引先社長を演じている点に作為的なものを感じた。
物流システムの過酷な労働環境をありありと映し出し、消費社会に警鐘を鳴らした『ラストマイル』然り。誰かの便利な暮らしを支えている彼らにもそれぞれの人生があり、大事な家族や友人、恋人がいる。踏みにじられていい人間など1人もいないんだということを野木のドラマは訴えかけてくる。