一瞬の癒しだった「東京ウォーカー」と花火
4話から6話の3話を通しても、癒されるシーンは数少なく、第5話の、秋久と岸セイラ(松本穂香)との花火デートくらいだろうか。秋久が調べるのに使ったであろう都市情報雑誌「東京ウォーカー(Tokyo Walker)」が映り、胸がキュンとなった。
まだネット検索がなかった時代、情報誌が頼りだったんだよなあ……としみじみ。そもそも1995年、つまりたった29年前はまだ、ネットがなかったということを思い出し、ビックリするのだが。
しかしそんな癒しも一瞬だった。秋久とセイラがラブホテルに入るシーン、これが怖い。ラブコメなら「おいおいこの日が来ちゃったよ~♪」となるシーンだが、そんなワクワク感はまったくなく、「もう引き返せない」「何をどうしたらいいのか」と不安が先に立つ秋久は、逆にリアル。その秋久にキスを迫られ、強く抵抗していたセイラの手がだらんと下に落ちるシーンは、あまりにも冷ややかでゾッとした。
ゾッとしまくりの4~6話。若さや欲求が上手にコントロールできなかった青春の思い出は、トラウマ。1995年という時代は、それと似ているのかもしれない。
「僕なんて」といいながら、どこか自分は特別だと知っている。けどうまくいかない。自分はここにいていいのかと常に問い、何に対してもなぜか「やりたくてやっているわけじゃない」という気持ちが前に出る。
1995年といえばアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が放送開始したが、秋久はほんの少し、碇シンジと似ている。「なんで僕が」と言いながら「逃げちゃダメだ」と立ちすくむ。
そして、3話までは頻繁に流れていた懐かしのJ-POPも減っていく。4話はCHAGE and ASKA「YAH YAH YAH」、5話は安室奈美恵「太陽のSEASON」、国武万里「ポケベルが鳴らなくて」。6話ではJ-POPは一曲も流れなかった。
そして、秋久の笑顔もなくなっていくのだ。