時空の歪みに存在したようだった「渋谷」という街
このドラマでなにより一番ゾッとするのは、「仲間以外を排除する」というチームの考えかもしれない。
翔の提案により、「渋谷浄化作戦」と名付けたチーム活動を展開し、地域内の不良グループを狙って行動を開始。待ちゆく人に絡むチーマーを殴って黙らせたり、ドラッグの売人をボコボコにしたり。援助交際をしたチームの仲間の加奈(浅川梨奈)も「ルールだから」とバッサリ切り捨てる。
でも、ルールを守る仲間のためならなんでもする。なんでもチームで考える。
この連帯感と、怖いもの知らずな空気感は、1996年に公開された映画『バウンス ko GALS』(監督・脚本:原田眞人)を思い出す。あの時代の渋谷の高校生の日常を女子目線で描いたのが『バウンス ko GALS』、男子目線で描いたのが『95』、という感じだ。
『バウンス ko GALS』はコギャルのリーダー的存在であるジョンコ(佐藤仁美)を中心に、当時の女子高生の生態が描かれ、彼女たちはヤクザの大島(役所広司)と協定を結ぶことになるのだ。
キャンキャンと騒ぎながら「若さ」という最高の商品を持った彼女たちは、それを躊躇なくビジネスをする。仲間のためには、ヤクザとの協定も破る。そして、やはり暴力やドラッグが、驚くほど近くにあった。
映画『バウンス ko GALS』ドラマ『95』、どちらにも感じるのは、渋谷という街そのものがいびつなエネルギーに満ちていた、ということ。あの頃の渋谷は、何か変な魔法にかかって、この世界線とは別の空間にあったのではないか、と思うほどだ。
そういった意味で、ドラマ『95』で、仲間になってもどこかあの雰囲気に馴染めず戸惑う秋久はいたって普通。だからこそ私たちに当時の空気を届ける最適なナビゲーターだといえる。
髙橋海人は見事に、主役の輝きだけでなく、気まずい表情と底光りする大きな目で、1995年・渋谷のいびつさを伝えてくる。イライラすると同時に、なぜか眩しくて目が離せない、あの感覚を。