劇場版で描かれる大門未知子のルーツ
医療モノのドラマや映画は非常に多く、ヒット作品の定番テーマとなっている感があるが、そんな中でも『ドクターX ~外科医・大門未知子~』は1つのお手本のような存在だと言える。
しかしながら、テレビドラマの劇場版には、スペシャルドラマと変わらないものになってしまいかねない、というリスクが付きまとう。それは天下の『ドクターX』であっても例外ではないだろう。
そうした懸念を踏まえてか、劇場版では、これまで断片的にしか語られてこなかった大門未知子の個人的な過去(=ルーツ)の部分に光が当てられている。
田中圭演じる森本光の目線を通す形で、今や誰もかなわない技量の持ち主である大門未知子にも未熟な時代があったことが明かされる。本作は、八木莉可子が演じる研修医時代の大門未知子の姿を描くことで、未知子の“かつて持っていた弱さ”が“今の強さ”に転じるさまを描いているのだ。
また、綾野剛演じる研修医時代に同期であった医師との絡みも見応えがある。ここで大門は、“血が苦手”、“解剖の時に気を失いかけていた”といった下積み時代の逸話を披露し、“外科医になるとは思っていなかった”と心の内を明かす。
このように今回の映画では、“失敗しない大門未知子”が“根底に抱える弱さ”が描かれている。これはドラマ版のファンにとって、サプライズと言っていいだろう。