シリーズ12年分の思いが込められた感動の締めくくり
これまでのテレビシリーズの『ドクターX ~外科医・大門未知子~』では未知子より年長な人物が、彼女の前に立ちふさがる“壁”として登場してきたイメージだったが、映画では一転して未知子より若い、後の世代からやって来た人間が脅威として登場している。
高い医療技術と権力の持ち主という点では今までの“壁たち”と変わらないものの、世代を変えるという面白いアレンジを完結篇となる映画版でやってきた。大胆な試みと言っていいだろう。
これらの仕掛けが『劇場版ドクターX』に映画らしい物語の厚みを持たせることに成功している。
冒頭にも記したが、私個人は“「ドクターX」シリーズ弱者”で新参者である。
故に12年間に渡って積み上げられてきたキャラクターの人間性や関係性には疎い部分もあった。ただそれでも『劇場版ドクターX』は十二分に楽しむことができた。
主演の米倉涼子が「12年分の思いがこもった」と語る本作だが、むしろこれを起点にして過去の12年間のシリーズを追い始めるのも良いかもしれないと思えた。
“シリーズ弱者”であってもこれだけ満足度が高いのだから、もちろん、これまでのシリーズのファンにとってはたまらない映画となっている。エンドロールなどは感涙モノだろう。
『劇場版ドクターX 』は“ファン感謝祭映画”的な完結篇であると同時に1本の独立したエンターテイメント作品に仕上がっている。
『劇場版ドクターX』はシリーズの総決算作品を見たいという方、入門編を探している方、主演の米倉涼子演じる大門未知子の凛とした姿を見たいという方、名優・西田敏行の最期の雄姿を見たいという方、どれか1つでも当てはまる方は必見の1本と言える。
(文・村松健太郎)
【作品情報】
『劇場版ドクターX』
監督:田村直己 脚本:中園ミホ
出演:米倉涼子 田中圭 内田有紀 今田美桜 勝村政信 鈴木浩介 染谷将太 西畑大吾 綾野剛 遠藤憲一 岸部一徳 西田敏行
Ⓒ2024「劇場版ドクターX」製作委員会