涙なしには見られない奥野壮の芝居
結果、城島はスポーツ大会当日に教室を燃やそうとする。その後、すんでのところで教室に駆けつけた加賀美と城島のやりとりは涙なしには見られない。
加賀美は城島を煽るような発言を繰り出し、わざと殴られる。いつものようにAIスーツを着用しているのだから、本当は避けられるはずなのに避けなかったのは正しい力の使い方を教えるため。加賀美なりに真剣に生徒と向き合おうとした結果だ。
そして城島と出会う前と出会った後の雪美の表情をプロジェクターで映し出す加賀美。それを見比べると、城島と出会ってからの雪美は明らかに笑顔が減っていた。かつて雪美と車椅子で転んだ人を一緒に起こした時は「さすがスポーツマン、力あるね」と笑顔で言ってくれたのに、暴力を振るうようになってから同じ言葉を言われた時、彼女の表情は暗く沈んでいた。
自分のせいで間違った力の使い方をさせているという罪悪感は少なからず雪美に影を落としたのではないだろうか。だけど、雪美も城島が自分を思ってくれていることに気づいているから、一緒に悪の道へ堕ちるしかなかったのだろう。
雪美を守っているはずが、彼女の人生を狂わせていた。それに気づいた時、城島は堰を切ったように涙を流す。後悔と罪悪感で感情が入り乱れ、言葉にならない声を上げる奥野の演技に胸が締め付けられた。
その後、怪我をした西谷の代わりにアンカーを担い、チームを優勝に導いた城島。「先生、あいつのことお願いします」と雪美を託すつもりで加賀美にバトンを渡すが、察しの悪い彼は受け取らない。すかさずツッコミを入れる芹沢一花(木南晴夏)と加賀美のやりとりを、目に涙を浮かべながらも笑顔で見つめる城島の姿にまた泣かされる。0組の中心人物を任されたのも納得の名演だった。