視聴者の心に残った「奇跡は準備するもの」
一連の救助活動を見て、彩は天気予報の意味にたどり着く。それは、「命を守るためにある」ということ。そこで暮らす人々が急激な気候の変化で大雨や雪崩、暴風に巻き込まれないで済むように。気象に携わる人たちの中には、そんな思いを持って伝えてくれている人たちがいるのだ。
でも、それでもどうしようもない災害に遭ってしまうことはきっとある。そのために晴原は、ハルカンとしてメディアに出ることで、雲による天気の予測や、災害に見舞われたときの対処法を発信してきた。「雪崩に対し横方向に逃げ、穴の中に逃げる」という雪崩が起きたときの対処法もそのひとつ。
いつどこで起こるかわからない自然災害に、人はどうしても無頓着になりがちだ。でも、どこかで誰かの目に触れればいい。伝え続けることでいつか役に立つかもしれない。きっとそんな思いで活動をしてきたのだろう。「奇跡は準備するもの」という晴原の言葉は、多くの視聴者の心に残ったはずだ。
リミットが迫る中、最後の要救助者・前田琢巳(久田悠貴)が崩落寸前の崖の上で発見される。消防班責任者の佐竹尚人(音尾琢真)が救助に向かうが、2人分の重さに耐えきれず、人は崖下に滑落、二重遭難してしまう…というところで第1話は幕を閉じた。
終わり際に一瞬映し出された「人は無力」という言葉が、焼き付いて離れない。自然はわたしたちを癒やしもするが、時として人知を超えた猛威をふるうこともある。
大きな力の前で、人は無力だ。最愛の人を亡くし、誰にも自分のような思いをさせまいという気迫を纏った山下智久は、圧倒的な存在感だった。
民放ドラマの主演を務めるのは2019年の『インハンド』(TBS系)以来、実に5年ぶりだというが、やはりこの人はドラマの真ん中に必要な人だと感じた。災害の多い日本に生きるわたしたちにとって、受け取るべきメッセージが多分に込められた作品を山下の演技とともに楽しめる喜びを存分に噛みしめたい。
(文・あまのさき)
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