草彅剛”羽鳥”のモデル・服部良一はどんな人? 史実を知れば数倍楽しめる…朝ドラ『ブギウギ』徹底考察&感想レビュー
現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。本作は、戦後昭和の大スター・笠置シヅ子をモデルとした主人公・スズ子(趣里)が、歌手としての道を突き進む物語。今回は、東京編にて登場した羽鳥善一(草彅剛)を中心に、物語を史実と共に振り返るレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:田中稲】
ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。
怖いが楽しそう! デリカシーがないが屈託もない東京編のオヤジたち
11月の『ブギウギ』は、光と影の混在だ。楽しさと華やかな成功の輝きがパーッとあり、それをジワジワと追うように、影や闇が侵食してくる。みんな大きな口を開けて、わっはっはと笑って泣いていたのに、少しずつ浮かない顔が増えていくのがリアルだ。太陽のように温かかった母、ツヤ(水川あさみ)の死、無邪気な六郎(黒崎煌代)の出征、東京で飲んだくれる梅吉(柳葉敏郎)、そして近くなる戦争の足音――。
哀しくなる前に、まずは11月のドタバタシーンのおさらいをしよう。東京編の特徴は、なんといっても男性陣。大阪編のオッチャンたちとは違った意味で濃い。
全員デリカシーゼロ。素晴らしい笑顔でダメ出しをする羽鳥善一(草彅剛)。常に上から目線、背中を掻けと命令してくるタップダンサー、中山(小栗基裕)。励ましの意味だけでスズ子(趣里)の頬にキスする思わせぶりの松永(新納慎也)。「一番最近したキスは! どこで! 誰とだよ!」と大声で問い詰めてくる、恐ろしい作詞家、藤村(宮本亞門)。恋バナをしているだけで、「浮ついた話は嫌いだ。けぇれ(帰れ)!」というおでん屋の主人(坂田聡)……。
なにより羽鳥の笑顔は本当に怖い。草彅剛、恐るべしである。SNSでも「サイコパス」「鬼」などなかなかの言われようだったが、いやもう、彼のようなフィーリングで教えてくるタイプの師匠ほど厄介なものはない。「福来くんの好きに歌うのが一番いい」と言っておきながら、「うん、違うね」「バドジズしてないな~」。全然よくないではないか。挙句の果てには「喉がつぶれてもいいんじゃない」「大阪帰る?」。
怖い怖い怖い! 普通は泣いて田舎に帰る。しかしスズ子は鋼のメンタルで乗り切った。彼女は羽鳥の言う通り「楽しもう」とするのではなく、「羽鳥先生、殺したる!」という気持ちで歌い、壁を突破したのだ。今回のヒロインは、本当に頼もしい。