10月のMVPは橘アオイ先輩!
「ブギウギ」の登場人物で、一番の子どもはきっと梅吉だ。では、一番の大人はだれかというと、梅丸歌劇団の大スターであり、スズ子の教育係である橘アオイ先輩だろう。
自分が劣等生だったからこそ、その経験を後輩に生かしたいと、大スターにもかかわらず新人の教育係を買って出る。ペアの大和礼子(蒼井優)がストライキをするとなったら、観客のためにならないと止め、いち早く理事長に直談判をし、礼子をかばう。
ストライキ中は一人劇団に残り、怒る観客の対応をする。そして、最後は大和とともに責任を取って辞める――。なんとできた人なのか。
これをただ「カッコいい」だけでなく、時にユーモラスに不器用に、人情味溢れるキャラクターとして演じたのが、現OSK トップスターの翼和希。しなやかで母性漂う大和礼子役の蒼井優と並ぶ立ち姿は、薄いピンクと濃い青、という色の対比も美しく、まさに柔と剛のナイスコンビだった。
彼女はこれがドラマ初出演。そのすさまじい緊張感と、OSKの看板を背負っているという責任感から出る、誠実の重み。それが徐々にほどけていき愛情と親しみに変わる感じ。これが橘先輩の不器用さにぴったりハマった。同時に、ブギウギ出演を心から楽しみたい、とする初々しさと純粋な喜びもインスタグラムでのオフショットからも溢れ出ていて、すべてが梅丸少女歌劇団の緩急とリンクしていた。
「橘アオイや。返事!」
初登場の仏頂面、威嚇するかのような太い声は悪役の風情すらあったが、どんどんと温かみを増し、一番しんどいところを引き受け、まとめていった橘先輩。役のキャラクターも、演じた翼和希も、10月のブギウギMVPといっていいだろう。