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クドカン脚本の魅力

ドラマ『不適切にもほどがある!』第1話より ©TBS
ドラマ不適切にもほどがある第1話より ©TBS

「『昔は良かった』なんて口が裂けても言いたくない。昭和もそこそこ生きづらかったし、戻りたいとは思わないけど、あの頃の価値観を『古い』の一言で全否定されるのは癪なんです。」と語る宮藤官九郎。(※『不適切にもほどがある!』公式HP引用)

そんなクドカンが今回選んだ題材は、「コンプライアンス」だ。

あれもダメ、これもダメ、多様性こそ全て!(極論)と言われる令和。

しかしルール違反を恐れるあまり、当たり障りのない、無機質で味気ないものに変わってしまったことも否めない。そんな時代に切り込もうというのが本作である。

本作で描かれた昭和の描写は、現代では考えられないワードや現象、物事が盛りだくさんだ。

男は男らしく。根性論に坊主の強要。ゴールデンタイムの地上波でおっぱい。タバコの価格や喫煙へのゆるさなど…。昭和世代の人間は、いつの間にかなくなってしまった昭和あるあるに、思わず爆笑してしまうほどだ。

だが、ドラマで描かれていることが本当に昭和の当たり前だったと思うと、驚いてしまう。

そんな価値観のギャップを、脚本や俳優や演出がマイルドに包み込み、笑いとして昇華している。

今回、脚本を担当した宮藤官九郎が所属する大人計画の舞台は、ブラックジョークや下ネタを含むのが特徴だ。阿部サダヲや皆川猿時、荒川良々など劇団員の特徴からも分かる通り、人が持つ“おかしさ”を描けば、天下一の面白さを誇る劇団である。

クドカン作品は「こんなことで悩んでいるのは自分だけなのではないか…」「こんなことでつまずいている自分はおかしいのではないか…」といったヘンテコさを演劇で笑いに昇華するパワーを持っている。

今回、宮藤官九郎が脚本に載せて我々に伝えてきたことは、人に言いにくいこと、本当の多様性ってなんなのか、そういった令和の常識を疑ってみることだった。

そんな彼がドラマという形式を使って大々的に世間に問いかける、新しいコンプライアンス意識。

「この表現はだめ」「これは炎上するかもしれない」といったルールに縛られすぎた、現代の重苦しい空気に風穴をあけることができるのか、期待のドラマが始まる!

(文・野原まりこ)

金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』TBS系毎週金曜よる10時放送中

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