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阿部亮平が体現する新たな“エリート像”

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第8話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第8話 ©日本テレビ

 そこで迎えた第8話、手嶋は容疑者に襲われて銃を奪われるという失態を犯してしまう。刑事として確かな仕事ぶりを見せてきた手嶋にとって最大の失敗と言えるだろう。それは落ち込みようからも明らかで、部屋の隅でうなだれたり、ベッドに寝転がってすねたりと、社会人なら誰もが身に覚えのある素振りで失意をあらわにする。

 エリートでも失敗するのだと親近感を抱かせるシーンだが、手嶋というキャラクターの美点はもっと別のところにあるのかもしれない。それが仲間に愛されるという特性だ。

 通常エリートといえば、他を寄せ付けず、一匹狼で手柄を次々と挙げるイメージがすぐに思い浮かぶ。刑事を題材にしたフィクションでは、往々にしてそんなエリートが周りと手を取り合うことで成長していく過程が描かれるが、手嶋はそれとは異なり、最初から身元不明人相談室のメンバーに優しく手を差し伸べ、縁の下の力持ちに徹することで事件解決に協力する、新たな“エリート像”を打ち出していた。

 だからこそ、手嶋が失態を犯して自宅謹慎という苦境に追い込まれた時、身元不明人相談室の仲間はすぐに動き出す。見返りも求めず、仕事で助けてくれる人々の存在は、手嶋の温かい人間性を雄弁に物語っている。

 拳銃を奪った犯人で、高校時代キャッチャーだった手嶋とバッテリーを組んでいた梶原真司(落合モトキ)は手嶋に対して「お前は刑事に向かねえよ」と言い放った。それは手嶋が優しすぎるという点で当たっていると思う。だが、相手を思いやり、涙を流すことができる手嶋だからこそ、救える人間がいて、きっと梶原もその一人だったのではないだろうか。

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