「まどう心」リアリストのまひろでさえ恋に迷う…。
道長の変化の良し悪しにかかわらず、その苦しい胸の内はまひろにも理解できるはず。それなのに「北の方」という言葉が出てきたのは、たしかにリアリストなまひろらしくない。
父である為時のために「源とも繋がっていた方がいい」と倫子との仲を深め、道長から駆け落ちを持ちかけられた時も国の未来のために気持ちをグッと堪えたまひろ。その彼女が、言い方は悪いが、あのような身の程をわきまえない発言をするだろうか。
もしかしたら賢いまひろのことだから、そう言うと道長が怒るであろうことを予想し、彼を諦めるために敢えてあの発言をしたのかもしれない。この説の方がまひろの性格から考えると有力だ。ただ今回のタイトルが「まどう心」であること。
また、「頭では分かってはいても心が言うことをきいてくれない」という恋に落ちた人間の複雑な心境を多くの作品で描いてきた大石静が本作を手がけていることから、筆者はまひろが思わず欲が出てあの発言をしてしまった説を推したい。それくらい、まひろの中では道長への思いが頂点に達しているのではないか。
それなのに「北の方は無理だ。されど俺の心の中ではお前が一番だ」なんて、不倫する男の常套句みたいなこと聞きたくないよね……と弱冠17歳ほどのまひろに同情してしまう。道長だってまだ20歳そこそこなのに、なんて色気のある恋愛をしているんだ。
まひろの元を去った後、父・兼家のところへお願いに上がる道長。それは「まひろと結婚させてください」というお願いではない。いよいよ倫子との縁談を進めるようだ。ああ、無情。こんな時に直秀がいてくれたらいいのにと思わざるを得なかった。
(文・苫とり子)
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