大河史上“最も生々しい不倫シーン”が心揺さぶる名場面になった理由は…? NHK大河ドラマ『光る君へ』第27話考察レビュー
text by 苫とり子
吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。夫・宣孝の足が遠のいた矢先、まひろは思いがけず、道長との再会を果たす。運命的な再会に引き寄せられる2人、そしてその後、まひろの身体には異変が…。今回は、第27話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
まひろが道長と再会し生々しいW不倫展開へ…。
夫となった宣孝(佐々木蔵之介)の無神経な言葉に腹を立て、香炉の灰を投げつけてしまったまひろ(吉高由里子)。以降、宣孝の足が遠のいてしまい、反省したまひろは、いと(信川清順)や乙丸(矢部太郎)らを連れ、石山寺を参詣することに。そこで再会を果たすのが、左大臣・道長(柄本佑)だ。
2人が顔を合わせるのは、まひろが越前へ旅立つ前に廃邸で密会した時以来。まひろは越前で周明(松下洸平)から教わった宋の言葉を道長に披露する。その様があまりに巧みなので、「そのまま越前におったら宋の国に行ってしまったやもしれぬな」と呟く道長。だが、まひろは都に戻ってきて、宣孝と結婚した。すると、道長は「戻ってきてよかった」とまひろにまっすぐな視線を向ける。
そこから2人は一気に良いムードへ。一度はそつなく別れようとするも離れがたく、引き寄せられるようにお互いの元へ戻ってきてしまうまひろと道長。そのまま口づけを交わし、場面が変わって、道長の腕の中に収まるまひろの姿が映し出される。大河ドラマで、こんなにも生々しくW不倫が描かれるのは初ではないだろうか。
それなのに不思議と嫌悪感を抱かないのは、吉高と柄本の持つ力だろう。どちらも清廉な雰囲気があり、かつまひろと道長のここに至るまでの葛藤をしっかり表現してくれているので、なんだか許せてしまうのだ。恋愛モノの名手・大石静も、現代とは恋愛における倫理観が全く異なる時代を借りて、ますます筆が乗っているような気がする。