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”直秀”の存在が2人の心をつなぐ

『光る君へ』第21話より ©NHK
『光る君へ』第21話より ©NHK

 しかし、最初に書いた物語はまひろが納得できるものではなかった。それは道長が嘘をついていたことが原因。道長はまひろに「彰子を慰めるため」と語っていたが、本当の目的は定子の死から未だ立ち直れずにいる一条天皇に、『枕草子』以上に夢中になれる物語を献上することだった。

 嘘を隠すのが苦手な道長は、「中宮様がお読みになるのですよね」というまひろの言葉に対する反応で結局はバレてしまう。「中宮様と申し上げるとお目がうつろになります」と鋭い考察を見せるまひろ。

 幼い頃から互いを思い合っているからこそ、誰よりもお互いのことを理解し合える。道長も、まひろの性格的に自分を政治の道具として扱われることを嫌がると分かっていたからこそ、本当のことを黙っていた。

 まひろは改めて一条天皇に献上する物語を書くため、一条天皇のことを道長から教えてもらうことに。一条天皇が美しい男性であったこと、幼い頃から定子のことを慕っていたこと…道長が語る一条天皇の姿に真剣な眼差しで耳を傾けたまひろ。

 その夜、2人は月の下で今は亡き直秀(毎熊克哉)について語らう。人が月を見上げる理由について「もしかしたら月にも人がいて、こちらを見ているのかもしれません。それゆえ、こちらも見上げたくなるのやも」というまひろの興味深い発言を受け、「直秀も月におるやも知れぬな」と溢す道長。

 続く「誰かが今、俺が見ている月も一緒に見ていると願いながら月を見上げてきた」という言葉にまひろはハッとしたような表情を見せる。

 道長が語る“誰か”は明らかにまひろのことを指していた。そして、それはまひろも同じなのだろう。心が折れてしまいそうになるたび、直秀のように無惨な死を遂げる者がいない世の中を…と誓い合ったあの日を思い出し、自分を律してきた2人。
 
 月にいる直秀の存在が離れている間もまひろと道長の心を繋いできたのだ。2人が単なる男女の関係ではなく、ソウルメイトであることを印象付けるシーンの数々が描かれた。

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