ほのぼのとした修羅場
今日も椿は実家からもらってきたもうすぐ枯れそうな花を活ける。するとそこへ、赤田(仲野太賀)が保険の営業にやってくる。巧みな話術で家に上がり込むと、しばらくしてゆくえが訪ねてくる。
椿が玄関へ出るのも待たずにリビングに入ってきたゆくえを見て、赤田は「彼氏? 付き合ってんの?」とやや険しい表情に。椿とはただの友だちだと主張するゆくえと、「ゴミ袋なんか買ってきて」「下の名前で呼ばせて」「自分の席って、この人の家ですけど」と嫉妬心剥き出しの赤田。
自分とゆくえがかつてたしかに友情を育んでいたことを忘れてしまったみたいな態度だった。ゆくえの中にも寂しさが生まれたのだろう、「元友だちからの心配なんていりません」と赤田にぴしゃりと現実を突きつける。言い返す言葉を失った赤田は、「春木さんは潮のタイプじゃない」と捨て台詞を吐いて去って行った。
高校時代から続いていた友人関係を終わりにしたのは自分でも、友だちを作るのが苦手だと思っていたゆくえにすでに別の友だちがいて、カウンターに色違いの4つのマグカップが並んでいるのを見て、赤田は何を思っただろうか。椿が純恋の、夜々が初恋の人の幸せを願うように、ゆくえの今の幸せを願ってほしいものだが……。
それにしても、説明が足りないって!と思わず突っ込みたくなるようなやりとりといい、2人の言い合いにおどおどし通しの椿といい、修羅場のわりにくすりとできるやりとりだった。
同級生の無邪気な男友だちを担う仲野太賀というのももちろんしっくりくるのだが、そこに“ムキになってもどこか笑える”というコメディ要素が加わることで、より赤田の役を仲野が演じる意味が深まる。実に印象的ないいシーンだった。