「ごめん」で終わらせない椿の誠意
ある日、夜々は椿の家にテーブルでできるエアホッケーを持ってくる。ゲームセンターの中で最も4人向きのゲームが、家庭用になると2人のためのゲームへ。椿と夜々の2ショットはこれまでも美容室などで度々見られたけれど、向き合って話す2人は少しだけ新鮮。でも、2人でのホッケーは、いまいち盛り上がりに欠ける。
会話の流れから、「私が純恋さんの代わりになるってアリですか?」と不意に口にする夜々。言ってから、きっと自分でも気づいたはずだ。告白をするのは絶対に今じゃないし、こんな聞き方も違うということに。
椿の表情から感情を読むことが難しい。それでももちろん告白には気付いていて、椿は「3人とも、同じくらい、同じように好き」と返す。かつて純恋がうんざりするほど椿の口癖だった「ごめん」ではない。椿は、夜々に誠実に向き合っている。
でも、どうだろう。仲良し4人組のほかの2人と同じだと言われること。きっと夜々を傷つけないようにと言ったのだろうけど、その言葉の残酷さがぐさりと刺さる。4人は4人のままで、続いていく。それは幸福なことでもあるし、紅葉からゆくえへ、夜々から椿への想いを抱えていることを知っていると、内側に少しだけ寂しさが広がっていくような感覚を覚える。