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味わい深い良作…ドラマ好きを魅了した理由とは? テレビ東京『痛ぶる恋の、ようなもの』考察&感想レビュー

ドラマ『痛ぶる恋の、ようなもの』(テレ東系)が完結した。本作は、スリーピースバンド・This is LASTの楽曲の世界観が元に制作された、若い男女の痛くて青い恋物語。今回は、物語を振り返りながら、登場人物の真に迫るレビューをお届けする。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:あまのさき】

アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

痛くて青い恋物語

©︎テレビ東京
©︎テレビ東京

「誰とチューしてたの?」という不穏な言葉で幕を開けた、「痛ぶる恋の、ようなもの」。芸術大学で映像制作を学ぶ根津晴(望月歩)と、同じ大学に通う久我ユリ(小川未祐)の、痛くて青くて、きっと誰しも少しだけ心当たりがあるような恋物語を全4話にわたって描いた。

終わってみると物語の静かな余韻とともに、久我ユリとは、根津晴とは、一体何だったのか?という疑問が浮かぶ。奔放で掴みどころがなく、自信に満ちているようでいて、どこかずっと寂しそうだったユリ。晴の視点で約1ヶ月の間ユリを見つめ続けたけれど、ずっと煙に巻かれているような気分だった。

ここでは、1~4話までをネタバレありで振り返りながら、改めて考えてみたい。

出会いは、2年前の春。“揚げニンニク”のあるラーメン屋さんでお互いの姿を認め、近くの立ち読みができるコンビニで初めて言葉を交わす。「『ONE PIECE』、載ってないですよ」とちょっと拗ねたように言うユリはかわいくて、初対面なのにぽつりぽつりと会話が続く。

ジャンプとパピコを買って先に帰ろうとした晴に、自転車の後ろに乗せてほしい、と頼むユリ。彼女の大胆さはこれだけにとどまらず、晴のパピコを勝手に半分こし、まるで自分のものみたいに「はい」と手渡し、片方を食べはじめる。

そんなユリのことを晴は「台風みたいなエイリアン」と表現する。自由奔放で、行動も読めないし、会話の内容も飛び飛び。観ているわたしたちも、まずは“そういうもの”としてユリを捉える。

だから、下宿先が同じとわかって、運命だ、奇跡だとひとしきり笑い転げたあとに、ユリが無言で晴を見つめ、おもむろにキスをしても驚かない。だってユリは、エイリアンだから。

そのままユリは晴の部屋に上がり、自分の部屋との違い(ユリの住む部屋には、前の住人が殴ったらしい穴が残っている)について少し話したあと、まるで晴を誘うようにして関係を持つ。付き合うかどうかの意思確認は、翌朝、目が覚めた後で行われた。「彼女できた―」と晴はうれしそうだが、ユリからは感情が読み取れない。

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