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“クドカンドラマが苦手”な人にこそ観てほしい…『季節のない街』の余韻がいつまでも消えないワケ。徹底考察&解説レビュー

text by 苫とり子

企画・監督・脚本を宮藤官九郎、主演を池松壮亮、共演を仲野太賀、渡辺大知が務めたドラマ『季節のない街』。本作は、仮設住宅の街を舞台に、個性豊かな住人が紡ぐ青春群像劇だ。ディズニープラスでの独占配信を経て、2024年4月より初の地上波放送された本作のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

クドカン節満載の人間讃歌
戦後のバラック街だった舞台を現代群像劇として再構築

ドラマ『季節のない街』【番組公式Instagramより】

 昨年、ディズニープラスで独占配信されたドラマ『季節のない街』が、テレビ朝日の“ドラマ25“枠で地上波初放送され、6月8日に最終回を迎えた。本作は、60年代に刊行された山本周五郎の小説を映像化したもの。1970年には黒澤明監督が『どですかでん』のタイトルで映画化し、海外で高い評価を得て、第44回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされたことでも知られる。

 同映画を“一番好きな邦画”に挙げ、長年企画を温めてリブートに至ったのが、“クドカン”こと宮藤官九郎だ。宮藤といえば、クドカン節と言われるユーモアを織り交ぜながら、人間賛歌の物語を紡いできた。おそらく生粋の人間好きでその愚かさや弱さも忌憚なく描いてきた作家だ(というより、それこそが彼の人間を愛する所以なのだと思う)。

 そして人間であるかぎり避けられないものが“死”であり、宮藤は多数の作品で“死”を身近なテーマとして扱ってきた。病気や事故はもちろん、こと日本に関しては自然災害が多く、数年単位で日常を壊し、多くの尊い命を奪っていく。

 宮藤は2011年に東日本大震災で震度7を記録した宮城県栗原市出身で、震災に対しては特に思うところがあるのだろう。連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK総合、2013)では東日本大震災、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(同局、2019)では関東大震災、『不適切にもほどがある!』(TBS系、2024)では阪神・淡路大震災と、折に触れて作品の中で震災を扱っている。

 本作もその1つであり、原作では戦後のバラック街だった舞台を仮設住宅のある“街”に置き換え、現代を生きる人々の群像劇として再構築した。

 特筆すべきは、12年前に起きたという大災害が“ナニ”という言葉で抽象化されている点だ。東日本大震災を想起させる場面もあるが、あえて限定せず、災害で全てを失った人々が、貧しくも逞しく生きる姿を映し出していく。

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