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クドカンの世界に共鳴する
名バイプレイヤーたち

仲野太賀
仲野太賀Getty Images

 
 重たいテーマを内包した物語を、個性豊かな住民たちが繰り広げる抱腹絶倒の群像劇に仕上げた宮藤。そこに一役も二役も買っているのが、コメディ芝居もシリアス芝居もお墨付きの名バイプレイヤーたちだ。それぞれの役者が緩急ある芝居で、これぞ人間! というような姿を突きつけ、心を揺さぶってくる。

 特に注目したいのは、タツヤを演じる仲野太賀だろう。仲野は近年のクドカン作品に欠かせない存在で、『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系、2016年)を皮切りに、大河ドラマ『いだてん』(NHK、2019)や舞台『もうがまんできない』など多数の作品でタッグを組んでいる。

 本作で演じるタツヤは仮設住宅に母と妹弟と4人で暮らしており、街から引っ越すための資金をコツコツ貯めている家族思いの青年だ。けれど、母のしのぶ(坂井真紀)は好き勝手に生きている長男を溺愛しており、タツヤに対しての扱いが酷い。

 仲野はそんなタツヤの悲哀こもごもを豊かな感性で映し出していく。特に、とある場面で見せた「笑っているのに心は泣いている」を見事に体現した演技は圧巻だった。

 宮藤と仲野は7月3日よりスタートとなる新ドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)でもタッグを組む。舞台は、新宿歌舞伎町に佇む病院。本作同様、歌舞伎町はホストやキャバ嬢、ホームレス、トー横キッズ、外国人難民など、“ワケあり”な人が集う場所だ。

 宮藤は今年1月期のドラマ『不適切にもほどがある!』で昭和の価値観と令和のコンプラ意識に切り込み、大きな賛否を巻き起こした。

 今回の作品も放送前から何かと批判を受けているが、不安に思っている人こそ、どうか本作を観てほしい。

 宮藤は笑いにこだわる作家であり、時としてそれが懸命に生きる人を茶化しているように見えることもある。だが、少なくとも本作においては登場人物それぞれへのリスペクトが隠しようもない形で顕在化している。

 歌舞伎町で生きる人々は世間から厄介者扱いされている側面もある。人間の長所も短所も平等に描く宮藤が、今作で彼らの見方を変えてくれることを期待したい。

(文・苫とり子)

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