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今期No.1ドラマの呼び声も…『西園寺さんは家事をしない』が記憶に残る作品となったワケ。唯一無二の魅力とは? 考察&評価

text by 苫とり子

惜しまれつつ最終回を迎えたドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)。いわゆる偽装結婚、偽装家族から始まるラブストーリーは数あれど、本作は既存のドラマとは一味違うと玄人をも唸らせた。今回は、総括として本作が多くの人を惹きつけたその理由を考察する。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

単なる”ラブコメ”じゃない
オリジナリティのある終わり方とは?

『西園寺さんは家事をしない』最終話より ©TBS
『西園寺さんは家事をしない』最終話より ©TBS

 9月半ばだというのに茹だるような厳しい残暑が続く今年。ひと足先に晩夏の寂しさを人々の心にもたらしたのが、松本若菜と松村北斗が共演する連続ドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)だ。今期No.1ドラマとの呼び声高く、みんなの心の癒しとなっていた本作が9月17日(火)に惜しまれつつ最終回を迎えた。

 ひうらさとるの人気コミックを原作に、徹底して家事をしない主人公の西園寺さん(松本若菜)が、年下の訳ありシングルファーザー・楠見くん(松村北斗)とその娘・ルカ(倉田瑛茉)との “偽家族生活”を通して心を通わせていく姿を描いた本作。

 ラブコメディだけど、このドラマにおけるラブコメディの“ラブ”は単に恋愛的な意味にとどまらない。「やりたくないことをやっている人をやらなくていいようにすること」が自分のやりたいことだと言ってのける西園寺さんから、全方位に向けられた愛の物語だった。

 西園寺さんは、家事アプリ制作会社・レスQに勤めるバリキャリ女子。そこに、アメリカ帰りのエンジニア・楠見くんが転職してくるところから物語は始まる彼は亡くなった妻・瑠衣(松井愛莉)との娘であるルカを育てるシングルファザーで、仕事と育児と家事に日々追われていた。

 そんな秘密を知ってしまった西園寺さんは放っておけず、自身が購入したマイホームの賃貸スペースに親子を住まわすことに。家族じゃない人に頼ることに抵抗がある楠見くんを助けるため、西園寺さんは偽家族として暮らすことを提案した。だが、その過程でうっかり楠見くんのことを好きになってしまう。

「利害が一致した人間同士が偽装の家族や恋人になる」話自体は世の中に溢れている。こういう物語は西園寺さんのようにうっかり相手を好きになってしまい、最終的に結ばれて本当の家族や恋人になるのがお決まり。だけど、本作はそういう単純な帰結に至らず(至るドラマもそれはそれで面白い)、オリジナリティのある解を導き出そうとした。

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