いなくなっても心の中に居続ける存在
最終的に、西園寺さんは横井を選ばなかった。正直、わたしが西園寺さんの親友なら、陽毬(野呂佳代)や洋介(塚本高史)のように、「そんないい人いないよ」と言っていたと思う。
でも、いくら想われたって好きになることができない相手はいる。想った分だけ、愛されるわけじゃない。想われた分だけ、愛せるわけじゃないのが、恋愛のむずかしいところだ。
でも、西園寺さんのなかに、横井の存在は確実に息づいている。出汁を取るために使う昆布や鰹節と同じで、選ばなかったからといって、一緒にいないからといって、その人の存在がなくなるわけじゃない。これは、楠見くん(松村北斗)にも、同じことが言える。
西園寺さんに恋心を抱いていることに気づいたものの、亡き妻・瑠衣(松井愛莉)を裏切るような気がして、前に進めずにいる楠見くん。たしかに、別の誰かに恋をすることで、瑠衣への想いを“上書き”してしまうような気持ちになってしまうのは分かる。
嫌いで別れたわけじゃない…というだけでも未練が残るものなのに、死別となると好きなまま別れが訪れるわけだから、簡単には前に進めないのだろう。