実力はあるがクセのあるチェロ・羽野とフルート・瑠李
羽野は、晴見フィルでティンパニーを担当する菜々(久間田琳加)の“推し”で、幼いころから才能を認められてきた優秀なチェロ奏者。ところが、晴見フィルへの勧誘のために夏目たちが羽野を訪ねると、自身の過去を「黒歴史」と一蹴し、「音楽活動はやめた」と言う。
それでも衣服についた松脂を見逃さなかった夏目は、まだ羽野が音楽を続けていると踏み、鍵盤ハーモニカを持参して再び彼のもとへ。なんでも羽野は、音楽が原因で自身の家族が壊れてしまったこと、ビジュアル売りに失望したことで人前での音楽活動に嫌気が差してしまったようだ。そんな羽野に、夏目はレッスンを受けようとする。アクセントのニュアンスを習い、チェロと鍵盤ハーモニカが音を奏でる。あまりにも楽しそうな光景だった。
説得をされたわけでもないのに、晴見フィルの練習へ行くことを決めた羽野。出掛けに、父にオケの練習に行くことを伝える。音楽に対するリスペクトはないらしい父が「音楽で食っていく気か」と問うと、食っていくとかではなく、「誰かに自分の音を聴いてほしかった」と答える羽野。
才能があるという誰かの言葉に熱狂した母、音よりもビジュアルとお客さんが喜ぶ曲を弾くことを優先させられた過去を思うと、この言葉の切実さが胸に刺さる。「君のバッハ先生は素晴らしい」と夏目が言ってくれたとき、どんなにうれしかっただろう。自分の音だけを聴いてくれた夏目とともに音楽活動をしていくことを羽野が決意するのも納得だ。
瑠李もまた、フルートの才能あふれる人物だ。ところが恋愛絡みでのトラブルが絶えず、「オケの調和を乱す」と数々のオーケストラをクビになってきた。りんごのスイーツ・アプフェルシュトゥルーデルのレシピを聞いた夏目に演奏者が素材となっているオケと同じように「自由に料理して」なんて答えるあたり、完全に夏目をロックオンした様子。楽器を弾く場所を失って間もない瑠李は、次の居場所が見つかるまでのつなぎとして晴見フィルへの参加を決めた。