父と娘が抱える過去
印象的だったのは、自宅で鍵盤ハーモニカを探す夏目に対して「変わらないね」と言ったシーン。音楽への深い愛情と、羽野の奏でる音を純粋に称賛したことや天音の才能を信じることに代表される本質を見極める能力、それから1話でスタッカートを餃子のタレを例に伝えるユーモアを持ち合わせている夏目が、なぜここまで拒絶させるほど響を傷つけてしまったのか想像がつかない。
音楽の才能に恵まれた偉大な父親という存在をプレッシャーに感じたのか? はたまた、それゆえに無神経な発言をしてしまったのか?
響もこっそり聞いていたが、晴見フィルの練習にやって来た天音に「指揮者は彼ら(演奏者)の痛みや苦しみを分かる人でないといけません」と夏目は語った。そのときの表情がいつもよりも固く見えたのは、自身の過去の過ちに照らし合わせていたからなのかもしれない。夏目は響が感じていた何らかの痛みや苦しみに気付けなかった、ということだろうか。
音楽が絡むと2人の仲は険悪になるが、アプフェルシュトゥルーデルにまつわるやりとりにはほっこりさせられた。1話では蟹以外の夏目の料理に手を付けようとしなかったが、餃子の皮を使って作ったアプフェルシュトゥルーデルはすぐに食べ、「美味いんかーい」と顔をほころばせる。陰でこっそり見ていた夏目が大きなガッツポーズをするところまで含めて、なんともいいシーンだった。
このまま仲良く……と願いたいところだが、一筋縄ではいかないのだろう。この親子が笑顔で音楽を奏でる光景を期待したいのだが、果たして。
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