”カルメン”瑠李の中に隠れた繊細さ
今回の「さよならコンサート」を通じて、夏目は瑠李(新木優子)と近藤(津田寛治)、2人の音楽への思いを知ることとなる。
幼少期に両親が離婚した瑠李にとって、フルートの発表会が両親のそろう唯一の機会だった。「そのときだけは家族3人に戻れる」からと、フルートの練習をがんばったという。人目を惹き、意図せず“魔性の女”のように見られることが多かった瑠李の、繊細な一面が見え隠れする。
そして、コンサート当日。瑠李の両親が、再婚して築いたそれぞれの家族とともに会場に来ていた。演奏を観に行くという母の言葉をあしらう。瑠李のなかに動揺を見た夏目は、彼女に心を寄せて声をかけた。曰く、「あなたのフルートは、優しくて繊細で傷つきやすい。だからこそ、あなたのフルートは美しい」と。
そのあとの瑠李の演奏は、「カルメン」のような激しい情動ではなく、そっと包み込むような優しい音色で「梅まつり」の来場者たちをあおぞら文化ホールへと誘った。赤いドレスに身を包んだ瑠李も素敵だったが、肩の力が抜けた笑みを湛える瑠李は、これまでのどんなシーンよりも美しく見えた。