「さよならコンサート」で夢をかなえる
晴見フィルのコンサートマスターを務める近藤は、出演こそ叶わなかったがこけら落とし公演の現場に居合わせ、写真に写っていた人物。いつもみんなを引っ張ってくれる存在だが、家族からは邪険に扱われていた。
今回が晴見フィルにとって最後のコンサートになるからと家族を誘っても、乗り気じゃないどころか全く相手にもされない。「最後くらいパパの演奏聴いてくれたっていいじゃないかよ」と揺れる目がなんとも切なかった。
そんな近藤は幼いころから指揮者になることが夢だったという。そこに着想を得たのだろうか、夏目は演奏の終盤で指揮をしてみたい観客たちを壇上に上がらせる。晴見フィルと「あおぞら文化ホール」で共演する最後の機会。なかには「長年の夢が叶った」と感謝する人の姿も。
そして迎えた最後の1曲。夏目は近藤の前に立ち、指揮をするよう促す。最初こそ緊張の面持ちだったが、40年分のホール、そして晴見フィルへの愛情を詰め込んだ指揮は情熱にあふれ、近藤だけでなく団員たちも生き生きとしていた。
そして、観客はスタンディングオベーション。近藤の家族は見ていなかったようだが、近藤の夢が叶った瞬間だった。感動と熱気のなかで「さよならコンサート」は幕を閉じる。