たむろする人々から時代が見える
歌舞伎町にはホストとキャバ嬢の揉め事、トー横キッズ、外国人難民など社会問題が山積みだ。ドラマでも冒頭、病院にさっそくホストが運び込まれ、外国人難民の強盗未遂も描かれていた。しかし、第1回のメインは若者問題ではなく、まさかの「シニア問題」である。
駐輪場の管理人で、ごみ拾いをし、トー横キッズ達にも声をかけ、新宿を見回っていた、ホスピタリティ溢れるカジさん(花王おさむ)。ところが強盗を目撃し、止めようとしたことでケガを負い「年も取ったしあぶないから」と職を追われることになり、生活保護を受けるしかなくなってしまう。その苛立ちから事件を起こし、暴力団の構成員という過去も明らかになるのだ。
長きに渡り努力して更生し、やっと安定してきたサイクルを、ある日簡単に崩される虚しさ、ヤケクソ感が生々しく描かれていた。
宮藤官九郎のドラマは、人が〝たむろ〟することで、「今」を見せてくる。噂話、昔話、名言、雑談、本音、不適切な想像、流行のモノ、人、場所。それらがガチャガチャとぶつかり合い想定していなかった出来事が(よくも悪くも)起こる。
そこから匂ってくるほどの時代性がぶんわりと浮かび上がるのだ。「今」とは、価値観が変わることで生まれる突然変異と、そこから淘汰される人の歪みが蓄積し、できているのだと痛感させられる。
第1話から、このスピードと情報量。ウッカリしていたら置いていかれそう、という不安もあるが、すぐ「拒否で!」と言わず、ヨウコの手術と同じくらい雑な目線で見続けたい。というのも、クドカンドラマは、一話完結ながらも、その話がパズルのように合わさっていき、最後、思わぬ景色が見えてくるからだ。
私たちは3か月かけて、歌舞伎町を通して、今の日本が「住めばミヤコ蝶々」(by堀井しのぶ)であるのか、突き付けられることになるのかも。
第2話はトー横キッズがテーマだ。オーバードースをして運ばれるマユ役は、映画『さがす』(2022)で独特の緊迫感を出していた伊東蒼さん。楽しみだ。
(文・田中稲)
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