航一「自分は信じられないけれど、法律だけは信じられる」
みな、航一に「自分を責める必要はない」と声をかける。だが、きっと航一は優しくされる資格なんてないと思っていたことだろう。いてもたってもいられなくなり、店を出て雪の中でしゃがみ込む航一。それを追う寅子は、「一緒にもがきたい」と航一の背中をさすった。
寅子と航一の出会いのシーンがふと脳裏に過る。あのときの航一は、何にも動じない印象だった。いまはどうだろう。胸の内すべてが明らかになったとは言わないが、感情がむき出しになっている。これは人の心の中に入り込んできて、知らぬ間に心を寄せてくる寅子という人間が近くにいたからこそ迎えた瞬間なのかもしれない。
また、航一は「自分は信じられないけれど、法律だけは信じられる」とも言っていた。これはある意味、憲法に記された「平等」に心酔している寅子と通じるところでもある。2人はまったく似ていないけれど、深いところで共通していたり、凸凹が噛み合ったりする。
ただ、寅子にとって憲法の「平等」が大事なのは、優三(仲野太賀)との繋がりを感じられるからでもある。しんしんと降り続いていた雪が止んで、辺りがにわかに明るくなったのは、2人の前途の祝福か、それとも。
(文・あまのさき)
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