当時の法律では「女性は男性の庇護下にある存在」
裁判の判決は
「離婚成立前ではあるものの嫁入り道具として持参した品々を返して欲しい」と妻が夫を訴える裁判が行われていた。嫁入り道具のなかには親の形見の着物も含まれる。当時の法律では、結婚中に妻の財産を夫が管理するのは民法が定めたルールとされていた。
離婚が成立していないいま、これを返してもらうことは通常ではありえない。自分が持参したもの、なまじ親の形見なのに、返してと主張する権利もないのかと唖然とする。
よねは、女が虐げられていることの怒りを忘れないために傍聴に来ているのだという。
一方で、寅子の同級生・桜川涼子(桜井ユキ)が言うように、妻が不利益を被らないためでもある、というのもわかる。夫の許可なく判断したことも、この民法があれば無効にすることができるからだ。
この時代、結婚した女性は男の庇護下にある。その事実がもつ良い点と悪い点。
ただ、これでは女性は意思を持たない存在となってしまう。ほとんど所有物としての存在。「結婚は罠!」と寅子が憤るのももっともだ。
現行法のもと着物を返してもらうのは難しいだろうと判断するよね。しかし寅子は「最後は裁判官の心証に委ねられることを期待したい」と考えた。そして、どんな判決を下すのかを見届けようと、生徒たちと傍聴へ赴く。
判決の結果、着物は返ってくることになった。結婚生活が破綻している以上、嫁入り道具を返さないことは夫による権利の濫用と判断されたのだ。当時としては、きっと異例の判決だろう。女子学生の目がたくさんあったことも作用したのかもしれない。
それでも、小さいけれど大きな一歩だ。
一連の裁判を見届け、法は規則か? 武器か? の2択ではなく、寅子が「法は弱い人を守るもの」だと表現したのが印象的だった。そして、彼女は“盾のような弁護士になる”ことを決意する。