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杉咲花が“記憶障害の脳外科医”に。月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』原作者×プロデューサーインタビュー公開!

text by 編集部

杉咲花が主演を務める月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜よる10時)が、いよいよ来週4月15日(月)より放送開始する。本作は、“記憶障害の脳外科医”が主人公の、新たな医療ヒューマンドラマだ。この度、元脳外科医の原作者・小鹿ゆずるとドラマプロデューサーの米田孝の対談が実現した。

杉咲花に縫合のコツをアドバイス!
原作者×プロデューサー対談インタビュー

『アンメット ある脳外科医の日記』
©カンテレ

ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』は、“記憶障害の脳外科医”という前代未聞の主人公が、目の前の患者を全力で救い、自分自身も再生していく新たな医療ヒューマンドラマ。

今回は、4月15日(月)初回放送を前に、原作者・小鹿ゆずる×プロデューサー・米田孝の本作にかける思いをインタビュー形式でお送りする。

『アンメット ある脳外科医の日記』
©カンテレ

【原作者・小鹿ゆずる&ドラマプロデューサー・米田孝 対談】

Q.先日、ドラマの撮影現場を見学されたそうですが、いかがでしたか?

子鹿:撮影現場を見るのは初めての経験だったので、スタジオに入ってまず「こんなにたくさんの人で作っているのか」とスタッフの数に驚き、セットを見学した際には、手術室の再現度の高さにも驚きました。すごくいい(高価な)顕微鏡が置いてあって、思わず食いついてしまったほどです(笑)。

現場は明るく和やかで、初めてお会いした杉咲花さんと若葉竜也さんもミヤビと三瓶そのもの。杉咲さんは、撮影の合間に縫合の練習の成果を見せてくれたのですが、とてもお上手でびっくりしました。顕微鏡越しの縫合に少し苦戦されているとのことだったので、僭越ながら、縫合のコツなどもアドバイスさせてもらいました。

米田:お2人とも、普段からそれぞれのキャラクターについて考えを巡らせ、何度も話し合いを重ねているので、そのキャラクターの生みの親である子鹿先生にお会いできて、とてもうれしかったようです。

子鹿:僕も、それぞれのキャラクターや作品に込めた思いを直接お伝えすることができて良かったです。特に、今回のドラマでは原作と違ってミヤビが主人公ですからね。原作を書いている僕がいうのもなんですが、ミヤビは記憶障害を抱えていること以外に、キャラクターとしては少し薄味なんですよね。

三瓶みたいに突拍子もないことを言い出したりしないし。それは、連載開始当初、僕がミヤビの心の葛藤をどう描いていいのか分からなかったことも要因なのですが(笑)、だからこそ、演じる杉咲さんも、つかみどころがなくて難しいんじゃないかなと思っていました。

でも、杉咲さんが見せる多彩な表情は、どれもミヤビそのもので、僕の心配は杞憂に終わりました。実は、僕がこの作品を出版社のコンテストに応募したとき、ミヤビというキャラクターはまだ存在せず、主人公の脳外科医が記憶障害の看護師を助けるために帰国したという設定だったんです。

それが、看護師ではなく同じ脳外科医にしようということで、今のミヤビが誕生しました。そして、僕の中ではミヤビこそが、この作
品の中でいちばんの人格者。表立ってはいないけれど、自然と周囲の尊敬を集めるような人物に描いてきたつもりです。

ただ、女性の心の内を描くとなると難しくて、正直、思うように書けなかった部分も。そんなときに、関西テレビさんから「ミヤビを主人公にしてドラマ化したい」とお話をいただいたんです。実はドラマ化のオファーはほかにも数社あったのですが、ミヤビを主人公にと提案してくれたのはカンテレさんだけ。

それはおもしろそうだとワクワクしましたし、主人公ともなれば、僕が描きたかったミヤビをしっかり描いてもらえるのではないかと思いました。

米田:原作と主人公を変えるという点を含め、先生にドラマ化を快諾していただいたときは本当にうれしかったです。最初は、朝起きると前日のことをすべて忘れてしまうミヤビが、どういう心情で1日をスタートし、患者さんとどう向き合い、どうやって過去を乗り越えていくのかを見たいという僕の率直な思いから、ミヤビを主人公にしたいとご提案させていただきました。

先生や担当編集者の方との打ち合わせの中で、ミヤビは自分が抱えた障害を恨むのではなく、受け入れたうえで患者さんと向き合う人なのだと理解を深めてからは、それこそがキャラクターづくりの根幹になる部分だと思い、先生から聞いたお話をもとに、杉咲さんとコミュニケーションを重ねてきました。

その結果、「こういうとき、ミヤビはミヤビにしかできないことをすると思う」と、杉咲さんが自らミヤビの動きについてアイディアを出すこともありました。

子鹿:ミヤビの持つ明るさは、決して外に向けたものではないんです。障害があるけど明るく振る舞う、障害をものともしない明るさを持った人…とかではなく、強いて言うなら、物事の受け取り方が明るい人というイメージです。

それが、彼女の強さだったり、患者さんとその家族の救いになったりするので、そういった、僕が原作で描ききれなかった部分をドラマで描いてもらえるとうれしいです。

米田:そうですね。僕たちがやるべきことは、そんなミヤビを客観的に見つめるのではなく、彼女の強さや意志、かわいらしさというものを彼女の主観を通して作っていくこと。患者さんにしてもそうですが、障害を抱えた人が、苦しい中で前を向こうとする姿、立ち上がろうとする強さを描いてはいきますが、決してお涙頂戴だけの物語にはしたくないし、ましてや、三瓶によるスーパードクターの話にしたいわけでもないんです。

子鹿:脳外科は命を救って終わりじゃない。その後の人生の方がもっと長くて、それを見ていくのが僕らですから。だからこそ、脳外科にはドラマがあるんです。

米田:そう、やはりそこが、この作品のいちばんの魅力ですよね。もちろん作り手としては、視聴者の方に各話のクライマックスで感動していただきたいですが、僕らが本当に目指すのはそこではなくて、その先の希望の光。

視聴者の方が、登場する患者さんの未来をいかに想像できるか、思いを馳せられるかというのがゴールだと思っています。そのためにも、今回のドラマでは、患者さんと同じように荷物を背負ったミヤビを主人公に据えて、全話を通してミヤビ自身に、前を向いて進んでいく姿を体現してもらいたいんです。

子鹿:医師として葛藤しながらも未来は明るいと信じて進んでいくミヤビは、まさに僕が描きたかった姿。彼女が持つ明るさや強さは周囲の人を動かす原動力となり、希望の光となるので、そんなミヤビをドラマで見られると思うと、楽しみです。

Q.ドラマ化にあたり、子鹿先生から制作陣にリクエストしたことはありますか?

子鹿:僕は、どのエピソードが選ばれても、それをどう調理していただいても構わないのですが、やはり原作を愛してくださっている読者の方や、この作品で勇気づけられたという患者さん、そのご家族の方たちを裏切るような形にはしたくありません。

だから、そういった方たちが見ても納得していただけるものにしてほしいと、最初にお願いしました。そういう意味でも、1話は本当によかったですね。原作とは設定が異なりますが、それでも最後のシーンは、僕も脚本を読んでちょっと涙が出てしまいました。

米田:本当ですか!? それはよかった、安心しました(笑)。実は、プロデューサーとして医療ドラマを本格的に手掛けるのは初めてなので、物語上で医療の場面をどう描くか迷ったときに、原作があって子鹿先生がいてくださるというのは、本当に心強いんです。

最初の頃に先生ともお話ししましたが、後遺症という厳しい現実を提示する作品だからこそ、やはり医療的な裏付けというか、筋が通ったものにしたい。そのうえで、エンターテインメントとして視聴者のみなさんにお届けしたいと思っています。

Q.『アンメット』を通して、視聴者の方にいちばん伝えたいことは何ですか?

子鹿:僕が育ってきた昭和の日本社会では、重度の障害を抱えた人は施設などに入れて保護することを良しとしてきました。実は、僕の兄にも重度の障害があり、当時は施設に入所するしかなかったのですが、入所の際の兄の悲しみを目の当たりにし、母も僕もずっと罪悪感を感じて生きてきました。『アンメット』は、そんな僕の経験が原点になっているんです。

米田:人間(この社会)は、光が当たるところに目が行きがちで、その光によってできた影には目が向かない。影の側にいる人たちは、社会の隅に追いやられてしまう——この作品が訴えるテーマは、先生ご自身の経験から生まれたものだったんですね。

以前、先生は「三瓶の根底にあるのは怒りだと思う」とおっしゃっていましたが、今のお話を聞いて合点がいきました。そして、この作品をお預かりする責任を今まで以上に感じています。

ドラマ化するにあたっては、その根幹の部分の捉え方を間違ったり、軽んじてしまうことのないよう肝に銘じて、最終回まで走り抜けたいと思います。

子鹿:年月が経ち、今では施設入所以外の福祉サービスも増え、共生可能な社会になりつつありますが、いまだに、後遺症で苦しむ人や障害を抱えた人に無関心な人が多いと思います。ドラマを見てくださる方には、『アンメット』に登場する患者さんのような方たちの存在を知ってほしいですし、決して他人事だと思わずに、少しでも理解していただけたら。

そして、本当の意味で共生社会の大切さが伝わり、後遺症と闘う人やそのご家族、医療関係者の方に、少しでも希望の光を注ぐことができたら幸いです。

米田:この作品に登場する患者さんの多くは、手術を受けても完全には回復できず、後遺症と闘いながら生きていくことを余儀なくされます。そんな中で、当事者とその家族はどうやって希望の光を見出すのか、このドラマでは、ミヤビというヒロインを通して、それを見つけていきます。

くしくも僕自身、このドラマを企画した直後、母に脳腫瘍が見つかりました。予後不良の状態でしたが、それでも母は、小さな希望を見つけては笑顔をのぞかせていました。ほんの少しでも希望があれば、人は今日を明日につなげて前を向ける。家族としてそれを体感したからこそ、作品を通して伝えられることがあるのではないかと思っています。

『アンメット』がオンエアされた翌日の火曜日は、世の中が月曜日よりほんの少し明るくなってくれたら…。切にそう願っています。

■子鹿ゆずる
元脳外科医。「○○だったけど転職したら夢の印税生活で賞」略して「転生賞」にて『M’s BRAIN』で大賞を受賞。原作を担当する『アンメット―ある脳外科医の日記—』が『モーニング』(講談社)で連載中。
■米田 孝
カンテレ制作部所属。2017年『僕たちがやりました』でドラマ初プロデュース。その後、『健康的で文化的な最低限度の生活』『まだ結婚できない男』『竜の道 二つの顔の復讐者』『恋なんて、本気でやってどうするの?』などを手掛ける。

【4月15日(月)放送 第1話あらすじ】

1年半前、不慮の事故で脳を損傷した脳外科医の川内ミヤビ(杉咲花)は、過去2年間の記憶をすべて失い、新しい記憶も1日限り、寝て起きたら前日の記憶がなくなってしまう記憶障害に。

毎朝5時に起きて机の上の日記を読み、失った記憶を覚え直すことから1日が始まる。現在は、関東医科大学病院脳神経外科の教授・
大迫紘一(井浦新)の治療を受けながら、記憶をなくす前の研修先だった丘陵セントラル病院に勤務しているが、医療行為は一切行わず、看護助手として働いている。

そんなある日、アメリカ帰りの脳外科医・三瓶友治(若葉竜也)が新たに着任し、ミヤビが院内を案内していると、急患が運び込まれてくる。患者は女優の赤嶺レナで、検査の結果、脳梗塞と判明。夫でマネージャーの江本博嗣の同意を得て、すぐさま治療が行われることになり、三瓶はミヤビにも手伝うよう指示するが、看護師長の津幡玲子(吉瀬美智子)がそれを制止。

三瓶は、治療後、救急部長の星前宏太(千葉雄大)から、ミヤビが記憶障害であることを聞かされる。

治療を受けたレナは目を覚ましたものの、言葉を出すことがほとんどできず、後遺症による失語症と診断。

女優として絶望的な状況を目の当たりにしながら、何もできない自分にミヤビは葛藤する。そんなミヤビに、三瓶は記憶障害のことを知った上で、「人手が足りないんだから、できることはやってもらわなきゃ困る」と言い放ち、ミヤビにも医師として診察や診断をさせるよう、院長の藤堂利幸(安井順平)に直談判して…

ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』
4月15日(月)夜10時〜放送開始!

『アンメット ある脳外科医の日記』
©カンテレ

『アンメット ある脳外科医の日記』
2024年4月15日スタート 初回15分拡大 毎週月曜よる10時(カンテレ・フジテレビ系全国ネット)
出演:杉咲花 若葉竜也 岡山天音 生田絵梨花 山谷花純 尾崎匠海(INI) 中村里帆 安井順平 野呂佳代 千葉雄大 小市慢太郎 酒向芳 吉瀬美智子 井浦新
(1話ゲスト)風間俊介 中村映里子
原作:子鹿ゆずる(原作)・大槻閑人(漫画)
「アンメット-ある脳外科医の日記-」 (講談社「モーニング」連載)
脚本:篠﨑絵里子
音楽:fox capture plan
主題歌:あいみょん「会いに行くのに」(unBORDE/Warner Music Japan)
オープニング曲:上野大樹「縫い目」(cutting edge)
演出:Yuki Saito 本橋圭太
プロデューサー:米田孝 本郷達也
制作協力:MMJ
制作著作:カンテレ

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