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ほぼ原文のまま判決文を読み上げる異例の約4分

連続テレビ小説『虎に翼』第23週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

 そんな折、原告の吉田(入山法子)が法廷に立つことになった。矢面に立つことを心配する轟と、「どの地獄で何と戦いたいのかは自分で決めるべき」とするよね。しかし、広島から上京してきた吉田の話を聞いたよねは、彼女が法廷に立つべきではないと判断し、轟が手紙を代読することになった。

 ここへきて、よねの物事を俯瞰する力、きちんと見極められる力が際立つ。物言いこそぶっきらぼうだけれど、どれもこれも優しい選択だ。弁護士として、信頼できる。

 その後、裁判開始から8年目にして、ようやく判決が下される。寅子の逡巡を軸にしてはいたものの、法学者の見解の相違、轟やよねの戦いぶり、そして国側の代理人である反町(川島潤哉)の言葉にせずとも苦しむ様子…も描かれた。

 そして、寅子の提案で書き加えられた判決文。「棄却」という言葉だけでは伝えきれない裏側の思いがあるからこその行動だが、これは寅子たち以外にもそういう背景があることを想像させる。川島の背負ったものの重さがどれほどのものだったか。表情すらもほぼ変えなかったが、裁判の最後の彼の背中が雄弁に語っていた。

 途中、記者たちが退席しようとする中で、より一層声を大きくしながら汐見(平埜生成)が読み上げた約4分間の判決文は、ほぼ原文のままだと聞く。裁判の裏側をもっとドラマティックに描くこともできただろう。

 でも、ここにしっかりと時間を割いた意味は、判決文を聞けばよくわかる。原子爆弾の投下は違法行為であると、公の場で言葉にされたこと、それが残っていること。これだけでも、当時の関係者たちの思いが伝わってくる。もし観ていない方がいたら、せめてここだけでも観てほしい。

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