花岡は別の女性と婚約
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK
いつも落ち着いた色味のスーツを着ている寅子が、鮮やかな山吹色のワンピースで働いている。そのことに雲野たちの触手は一切動かなかったけれど、花岡はレストランで会うなり「よく似合っている」と言った。嫌味も下心も感じない、なんともスマートな言い回しだった。花江の言う、“一握りの男”花岡の本領発揮である。
だけど一握りの男は、その細やかな心配りゆえ、寅子に想いを伝えられぬ結果となってしまった。
実は佐賀への赴任が決まっており、一緒に来てほしいと言うつもりだった花岡は、嬉々として自身の夢を語る寅子を前に言葉を飲み込んでしまったのだ。自分のせいで夢を諦めさせるわけにはいかない。歯がゆいけれど、一切気持ちを伝えずに去って行く花岡には好感が持てた。
ショックだったのは、寅子とともに弁護士になった久保田が、寅子よりも先に法廷に立つことになった日のこと。たまたま仕事で東京に来ていた花岡の横には、しれっと婚約者の姿があったのだ。
もちろん、この時代にあって花岡のような人がずっと結婚せずに寅子を想い続ける……なんて夢物語が存在しないだろうことはわかっていたつもりだったが、花岡は寅子も婚約者もいないところで、妻について「女学校を卒業したら家庭に入ってくれる」のだと説明する。