目黒蓮”夏”が”全てを抱え込もうとする姿がもどかしい…海”に選択を委ねた深いワケ。 『海のはじまり』第10話考察レビュー
目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)は、名作『silent』の制作チームが再集結し、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品だ。人と人との間に生まれる愛と、そして家族の物語を丁寧に描く本作の第10話の考察レビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
夏(目黒蓮)が海(泉谷星奈)に選択を委ねた理由とは?
何かを選ぶためには、何かを捨てなければならない。海(泉谷星奈)を産むために、夏(目黒蓮)と別れた水季(古川琴音)のように。海のお母さんになることよりも、自分が幸せだと思える道を選んだ弥生(有村架純)のように。時に、人生は究極の二択を迫られるものだ。
『海のはじまり』(フジテレビ系)第10話、夏は海を選ぶために、たくさんのものを捨てようとしていた。3年間付き合った恋人・弥生と別れただけじゃない。海が転校しなくてすむように、仕事を変えて引越しまでしようとしている。
「親がストレスでボロボロになったら、子どもに二次災害だよ。自覚とか責任とか、そんなんで子ども育たないよ」という先輩(中島歩)からのアドバイスがなければ、夏はあのまま転職していたのではないだろうか。
弥生も言っていたけれど、仕事は生活につながる。これまで、自由気ままなひとり暮らしをしてきた夏が、6歳の女の子の父親になるだけでも、生活は大きく変わる。
その上、仕事まで変えてしまったら、生活がままならなくなるのは一目瞭然だ。理想ではいくらでも美しいことを語れるけれど、現実は優しさだけでは生きていけない。
ただ、夏は母親の再婚がきっかけで、転校や苗字の変更を余儀なくされた経験がある。だからこそ、選択肢が与えられないまま、人生が大きく変わることに戸惑う気持ちが分かるのだろう。
夏が「どっちかを選んで。転校して、一緒に暮らすか。転校しないで、このまま別々に暮らすか」と海に選択を委ねたときは、「6歳の子に、そんな重大な決断をさせるなんて酷すぎないか?」と思ったが、よくよく考えてみたら、“あのときの自分”が親にしてもらいたかったことを、海にしてあげたのかもしれない。
母・ゆき子(西田尚美)に漏らした「子どもが全部、親の都合に合わせて変えなきゃいけないのはちがうんじゃないかって」という言葉は、小学生だった夏が思っていた本音だったのだろう。