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「いなくなるのって、消えることじゃないですよ」

『海のはじまり』第11話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第11話より ©フジテレビ

 また、第11話は言葉のむずかしさを感じた回でもあった。たとえば、夏が海にかけた「無理に水季の話しなくていいからね」という言葉。これは、海が水季のことを思い出してしんどくなるのなら…という意味を込めて言ったのだと思うが、海は「水季の話、しなくていいよって(言われた)。ママのこと、忘れた方がいいの?」とまったく違う意味で捉えてしまう。

 そして、「いる、いない」と「いた、いなくなった」も、同じことのようでまったく異なる。

 海は、転校先の小学校でできた新しい友だちに「ママ、いないの?」と聞かれたとき、「いない」と答えるのが苦しいのだと思う。だって、つい最近までママは一緒にいて、ママがいた事実は変わらない。それなのに、なぜ「いない」と答えなければならないのか。海は、「いない」と答えるたびに、水季との思い出までなかったことにされてしまう怖さを抱いていたのかもしれない。

 それなのに、夏は「ママいないけど、パパがいるって言えばいいんだよ。俺がいるから」と言う。「ママはいない人なの?」と聞かれたときも、「俺は、いなくならないから。2人で頑張ろう」と言い、海を励ます。どちらも、正しい答えだ。でも、優しくはない。

 脚本家・坂元裕二が紡いだ台詞に、「いなくなるのって、消えることじゃないですよ。いなくなるのって、いないってことがずっと続くことです。いなくなる前より、ずっとそばにいるんです」というものがある。

わたしは、この台詞がすごく好きだ。亡くなったとしても、その人がいた事実がなくなるわけじゃない。むしろ、生きていたときよりも、そばに感じられることだってある。

 海は、きっと「ママはいたし、これからもずっとそばにいるよ」と言ってもらいたいんだと思う。無理に切り替えて前を向くのではなく、悲しみが薄れていくまで、その悲しみを抱えたまま生きていけばいい。

 そして、ちょっぴり寂しいかもしれないけれど、悲しみはずっとは続かない。“時間薬”という言葉があるように、時間が流れていけば癒されていくものだ。海に現実を教えるのは、そうなってからでも遅くはないような気がする。

【著者プロフィール:菜本かな】

メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。

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