夏(目黒蓮)にもわからない弥生(有村架純)の心の内
中絶手術を受けるときも、夏は水季に付き添い、病院の前でずっと待っていた。しかし、弥生はひとりで病院に行き、悠馬からのメッセージも「終わった?」のみ。ここでも弥生は強がって、「終わった! 全然大丈夫だった!」と返してしまう。
本当は全然大丈夫じゃないはずなのに。心はズタボロで、罪悪感に押しつぶされそうで、すでにお腹を守る癖だって染み付いていて、弥生のなかで“お母さん”はとっくに始まっていたのに。
きっと、悠馬はすでに弥生との間の子どものことをすっかり忘れて、新たな人生を歩んでいるのだろう。彼のなかで、“お父さん”は始まらないまま終わり、弥生のなかでの“お母さん”はずっと終わらないまま。実際に中絶手術を受けるときの気持ちは、受けた側にしかわからない。夏のように想像を膨らませて、ずっと罪悪感を持ち続けている男性は珍しいのかもしれない。
客観的に見たら、夏は命を大事にして、彼女に対しても責任感を持っていた“いい男”だ。しかし、弥生の立場になって考えるとどうだろう。「ずっと、自分が殺したんだって思ってたから」と夏が言ったとき、弥生は自分を責められているような気持ちになったのではないだろうか。